紳士たる球界の盟主だからこそ、この男だったのかもしれない。巨人が20日のドラフト会議で、高校通算68本塁打を誇る香川・高松商の浅野翔吾外野手(17)を事前公表通り1位指名。誠意と信念が実り、競合した阪神との抽選の末に原辰徳監督(64)が当たりくじを引き当て、交渉権を獲得した。最大の目玉と呼ばれた高校No.1スラッガーには〝意中の球団〟が存在したが、それこそが紳士球団・巨人にふさわしい実直で誠実な浅野らしいエピソードだった――。
「1位公表」が史上最多の9球団に及んだ異例のドラフトは巨人が9月28日に12球団最速で「浅野1位」を公表したのが始まりだった。運命の日、夢をかなえた17歳は安堵の笑みを浮かべながら「伝統ある球団に指名をいただいてうれしい。体の小さな選手に勇気を与えられる選手になりたい」と所信表明した。
身長170センチ、体重86キロの体格から超高校級の弾道を放ち続けてきた。加えて俊足、強肩、さらには両打ちとまさにセンスの塊。今夏の甲子園では3試合で打率7割、3本塁打、出塁率8割と大舞台での勝負強さを証明した。1つ先の塁を狙う意識の高さ、相手投手のクセを見抜く観察眼と洞察力もある。「勘」の良さを評価するスカウトは多かった。これだけでも「巨人1位」にふさわしい選手であることは間違いないが、プロのスタートラインに立ったばかりの17歳の大成を予感させるのが「人間性」だ。
誰しも〝意中の球団〟はあるもの。例外なく浅野にもそれはあった。プロ一本に絞った時点から「高卒3年目の一軍定着」を掲げ、12球団の戦力編成を見定めていた。「本当にしっかりした子です。プロに入ることがゴールではなく、プロで活躍してこそ入る球団や指導者たちへの恩返しだと分かっている。自分の能力と特性を心得ているから、その球団ならちょうど世代交代の時期に自分がレギュラー争いに加われると見ていたんです」(高松商関係者)。至極まっとうな理由で、巨人ではない関東の球団に思いをはせた。
「誰からも愛され、応援される人間」。恩師の長尾健司監督をはじめ、学校の教職員たちは口々に人柄の良さを評してきた。心優しく、誠実――。実は浅野にはもう一つ意中の球団があった。「一番早くから見守ってもらって、一番多く見に来てもらったスカウトの方との縁を望んでいたんです。浅野はその方が視察する試合で決まってホームランを打っていました」(前出の関係者)。心を通わせていたのは、あるパ・リーグの球団だった。恩を忘れず人を喜ばせるスターの素質を持ち合わせている。周囲からのやっかみや嫉妬で足を引っ張られるたぐいの人間ではないことも、プロでの成長には欠かせない。
「人から愛される。だから巨人が選んだんだと思います」とは筋金入りのG党である長尾監督。香川が生んだ〝証明書付き〟の紳士が、名実ともに「巨人の星」となる日は意外と早くやってくるかもしれない。












