元猪木番記者が〝昭和〟の燃える闘魂を振り返る第11回。アントニオ猪木さんは記念写真をねだられた相手に…。
話の大半が私事なので我慢して読み進めてほしい。猪木さんは後半出てきますので。
猪木さんとロサンゼルスからニューヨークへ飛行機で向かった。1980年代の終わりごろ。搭乗し、出発を待っていると、何やら騒がしくなってきた。誰かが大きな声で楽しそうに話している。誰だろうと思ってCAさんに聞くと「ミスターTですって」。
映画「ロッキーⅢ」やTVドラマ「特攻野郎Aチーム」に出てた、あの黒人のモヒカンの大男? それなら見に行かなきゃと近づくと…同じ黒人でも全くの別人だ。でっかいラジカセを置いて「YEAH~」と体を揺らしている。「違うじゃないか」と、さっきのCAに文句を言うと「ミスターTですよ。ミュージシャンなんですって」。
ミュージシャン? 待てよ、Tってティー(Tee)のことか。あの70年代後半の人気フュージョンバンド「スタッフ」のキーボード、リチャード・ティー!? 改めて見に行った。じっくり見ると、高校の時に針がすり切れるほど聴いたレコードのジャケットに映っていたリチャード・ティーさん本人だった。
もちろん私は大興奮。完全にいちファンに戻り、サインをもらったりして自席に戻った。隣の猪木さんが「誰なんだい?」と聞いてきたので説明していると、今度はティーさんがこちらに近寄ってくる。そして猪木さんを発見するや「OH! イノーキ! テレビで見てるよ。俺、大ファンなんだ。握手してくれ。一緒に写真撮ってくれっ」と抱きつかんばかり。
戸惑い気味の猪木さんだったが、ここでまさかの質問が。「こいつ、有名なのかい?」。ジャズやフュージョンが好きな人は知っていると答えると猪木さん、戸惑いの表情はどこへやら。満面の笑みで写真に納まってみせたのだった。
有名か有名じゃないかが線引き? おいおい、まじか。でも、さすが猪木さん、計算高いということにしておこう。モヒカンのミスターTじゃなくて、すみませんでしたね。
(元プロレス担当・吉武保則)












