阪神・糸井嘉男外野手(41)が13日に今季限りでの現役引退を表明した。会見で「このたび、現役を引退することになりました。やり切りました! 41歳まで野球ができて本当に幸せでした」とすがすがしい表情で胸中を語った〝超人〟との日々を、本紙番記者が振り返った。


【取材の裏側 現場ノート】オリックス時代、キャラの強い選手が少ないチームの中で糸井は異色な存在だった。鍛え上げた超人的肉体に加え、天然の入った〝ワードセンス〟が面白く、その言動をいつも気にかけた。台風が接近すれば「俺も台風になったる」と誓い、打撃不振が続けば「糸井~アウト~」と自虐的に叫ぶ。試合に向けて「今日はジハードでいく」(自己犠牲で戦う?)と張り切ったかと思えば「トゥモロー ネバー ノウズ」(明日のことは分からない)、「アイム ハングリー」(俺は飢えている)と謎な外国語を発することも多かった。

 社会情勢にも興味を持ち「国際ハッカー集団のアノニマスというのがすごいらしい。どんなコンピューターにも入っていける」と熱っぽく語るので、誕生日プレゼントにアノニマスのマスクを渡した。さぞウケるかと思いきや「怖いわ! あんなもん、怖くてかぶれんわ!」とマジでビビりまくっていたのもおかしかった。

 独特のオーラをまとう超人も、イチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)のことになると子供のような表情を見せた。神戸での自主トレに参加し「小学生がプロを見ているようだった。でも気さくでよかった。雲の上の人。投手から野手に転向した時にまずイチローさんみたいになりたいと思った」。

 守備でもイチロー氏を意識し、ある日の試合で右翼からレーザービームで鮮やかに補殺を決めたことがあった。してやったりの糸井は自らの背番号にちなんで「エリア51が見えましたか。エリア7と呼んでください!」と記者にアピール。「エリア51」とは元々、墜落したUFOが運び込まれたとされる米ネバダ州の空軍施設だが、イチロー氏のマリナーズ時代、セーフコフィールドでの右翼守備でヒットがアウトになり、長打が単打になる「不思議な現象が起きる空間」として、米メディアが「エリア51」と称したもの。糸井もそれにあやかった。

 打撃と同様に守備への意識も高く「自分は昔ピッチャーをやっていたからピッチャーの気持ちがわかる。だからヒットになるような打球をアウトにしたい。少しでもピッチャーを助けたい気持ちがある」と明かし「フェンスをよじ登る練習もする」と〝本塁打捕球〟も視野に入れていた。

 その後「エリア7」が世間に浸透することはなかったが、記者の胸には生き続けている。プレーはもちろん、ピュアで天然な魅力を併せ持つ愛すべき超人。唯一無二の選手だった。

(オリックス担当・西山俊彦)