パドレス3Aエルパソを退団し、NPB復帰を目指していた秋山翔吾外野手(34)が27日に広島入団を決断し、当該球団から発表された。古巣・西武が当初から恐れていた〝ダークホース〟に、秋山復帰の道を断たれる結果となってしまった。
交渉に当たった鈴木清明球団本部長(68)は、2015年の新井、黒田のカープ復帰に尽力した敏腕交渉人。「交渉役の鈴木さんが松田オーナーの命を受け、誠心誠意交渉に乗り出してくる」ことを警戒していた西武にとっては、渡辺GM―秋山の信頼関係を動かせるとしたら「カネよりも交渉人の熱意や情熱」と読んでいた通りの展開だった。
それに加え、侍ジャパンで意気投合していた菊池涼、会沢、田中広とは西武時代から同じキャンプ地(宮崎・日南市)で頻繁に食事の席をともにし、それぞれの野球観をすり合わせる間柄だった。
そして、西武側が恐れていたもうひとつの理由が「現状のチーム構成に対する遠慮」だ。
西武では15年にもメジャー挑戦が不発に終わった中島(現巨人)に再獲得オファーを出しながら空振り。獲得競争に敗れオリックスに行かれた苦い経験がある。
一線級が何人いても邪魔にならない投手とは違い、野手の場合は同一ポジションにレギュラー級が重なると必ずどこかにしわ寄せがいく。
秋山の性格上、自分の個人的な事情でメジャー挑戦を選択し、その間に西武は次の「1番・中堅」の育成を進めた。米国での需要がなくなり帰国した自分が簡単にその優先順位のトップに戻っていいのかという葛藤。さらに西武に戻れば、チームカラー、内情を知っているだけに自分が負うべき役割、チーム内序列が容易に想像できてしまうことも今回はマイナスに作用してしまったようだ。
まったく知らない土地とチームでの挑戦を求めて、米国シンシナティの地へ旅立った2年半前…。秋山の中に夢破れてなお、挑戦への炎がくすぶっているのなら、戻った後の将来が見通せてしまっている西武は、早い段階から選択肢から消えていた可能性もある。