昨年の東京五輪を巡る〝闇〟が1年後の今になって浮上している。大手広告代理店・電通の元専務で大会組織委員会の理事を務めていた高橋治之氏(78)の会社「コモンズ」が、大会スポンサーの紳士服大手「AOKIホールディングス」から多額の資金を受領。スポンサー選定の便宜を図ったとして東京地検特捜部の捜査対象になっている。今回の疑惑の問題点はどこにあるのか。高橋氏と組織委内部に精通する人物を直撃した。


 昨年夏の東京五輪は新型コロナウイルス禍の中で開催され、日本勢は史上最多の金メダル27個を獲得した。それから1年後、皮肉なことに「金(カネ)」の問題が持ち上がっている。

 AOKIは高橋氏が代表を務めるコモンズと2017年9月にコンサルタント契約を締結し、約1年後の18年10月に大会スポンサーになった。昨年7月の東京五輪開幕までに、AOKI側がコモンズに支払った金額は約4500万円に上るとみられる。高橋氏は組織委の理事を務めていたため、東京地検特捜部は大会スポンサー選定を巡る便宜を図った疑いがあるとみて捜査を開始したが、高橋氏は一貫して疑惑を否定している。

 そこで組織委内部で高橋氏をよく知る人物A氏に接触。コモンズの実態について詳しく聞いた。まず、A氏は高橋氏について「彼は電通のスポーツマーケティング部門を作り上げた人物。電通を辞めた今も絶大な力を持っていて、その人脈を生かして同じビジネスモデルを自分の会社で実践している。つまりコモンズは〝ミニ電通〟なんですよ」と話す。

 では、コモンズのビジネスモデルとは具体的にどんなものか。A氏はこう続ける。

「コモンズはスポンサーを連れてきて(企業や組織に)紹介する会社。そこでスポンサーが支払ったお金の何割かをもらう契約です。これ自体は正規の取引なので問題はありません」

 仮にコモンズが便宜を図ってAOKIが大会スポンサーになっていたとしても、この事象について違法性はない。問題は高橋氏が組織委の理事を務めていたことだ。

「ここが高橋氏の脇の甘さですよ。〝みなし公務員〟である組織委理事が職務としてスポンサー選定の便宜を図ったとすれば大問題。これは受託収賄にあたると私は思います」

 高橋氏は「組織委理事の仕事とコンサル契約は別物」と主張しているようだが、A氏は「世の中そんな論理は通用しない。組織委理事のパワーが働いて〝口利き〟したと指摘されるのは当然。まあ、彼に関してはいつか問題が起きると思っていました」と指摘した。疑惑の解明が待たれる中、今後の展開に注目される。