絶対に負けられない試合だった。ソフトバンクは2日の西武戦(ペイペイ)に4―0と快勝し、連敗を3でストップ。首位攻防となったカード初戦を制して、ゲーム差なしながら西武と入れ替わって首位に返り咲いた。

 ロッテとの前カードで26イニング連続無得点、2試合連続の零封負けを喫して不穏な空気が漂っていた中で指揮官が博打を打ったゲームだった。

「起爆剤が欲しい」。藤本博史監督(58)は新型コロナ陽性判定から12日、二軍での実戦わずか1試合で主砲・柳田悠岐外野手(33)の帰還を決断。中村晃、牧原大、周東らもいない中、穴を埋めてきた若手の状態が尻すぼみとなり、手詰まりとなっていた。もう柳田しかいない――。守備の実戦確認が済んでいなかったが、首脳陣は満場一致で前倒し昇格を決定。実戦不足による故障リスクを考慮すれば、それは賭けだった。

 指揮官は「状態は悪い。でも、いるだけで嫌。僕が敵だったら絶対に嫌」と唯一無二の主砲に緊急SOSを送った意図を説明。「6番・右翼」に配し、結果の責任を背負った。柳田の打撃うんぬんではなく、柳田を戻したゲームで勝つことが最大かつ唯一のテーマ。勝つか負けるかで、天と地ほどの差があると言っても過言ではなかった。事実、チーム内に柳田の故障リスクや状態を鑑みて懐疑的な声がなかったわけではない。そこは首脳陣も承知の上での決断。柳田以上の起爆剤はいないだけに「最終手段」で負ければ、立て直しに窮するのは明らかだった。

 柳田に快音は聞かれなかったが、7回に貴重な追加点の起点となる四球を選んで勝利に貢献。試合後「とにかくケガなく、チームが勝てたことが何より」という言葉にミッション完遂の安堵感がにじんでいた。

「勝利への執念」をチーム全体が共有した特別な一勝。鷹が再び上昇気流に乗りそうな気配だ。