【赤坂英一 赤ペン!!】 巨人の新人クローザー大勢の投球を見るたび、つくづく感心させられるのがメンタルの強さだ。昔から巨人の守護神は0点に抑えて当たり前、たまに打たれただけでもこっぴどくたたかれる。角、鹿取、石毛、河原、西村ら、歴代抑え投手は全員そういう精神的重圧に苦しめられてきた。

 オールドファンなら、石毛が四球で自らピンチを招き、自滅して試合をひっくり返される場面を再三目撃してきたはず。そうしたプレッシャーの大きさを考慮されてか、西村は首脳陣に「抑えをやれ」と直接指示されていない。前任者の久保がケガをしたため「とりあえず最後に投げろ」と投手コーチに言われ、徐々に抑えに定着したのだ。

 そんな先輩もいる中、ドラフト1位ルーキーの大勢は自らクローザーを志願。12球団最速となる60試合目で20セーブに到達し、球団最速記録、プロ新人最速記録を更新したのだからすごい。この前半戦の大活躍の裏側にあったのが、球団によるメンタルケアだ。

 大勢は今年のキャンプイン直前、ドラフト5位・岡田、育成3位・亀田とともに新型コロナウイルスに感染。寮の自室で隔離生活を強いられた。

 大勢たちはショックを受け、心細い思いをしているはずだ。そう考えた川相ファーム総監督、高木編成本部長補佐、芳川ファームディレクターは新人と1人ずつリモートで面談。メンタルをケアする専門家とつないで、適切な助言をあおいだ。

 大勢はこの時、専門家の質問に応えて、自室でできるだけ体を動かし、風呂などで汗を出すようにしていること。食事や睡眠も十分に取れていると回答。そうした心身の状態を川相総監督らファーム首脳陣も共有して、回復した大勢を一軍キャンプに送り出したのだ。プロの世界で生き残るのに必要なのはもちろん実力だ。が、このようなメンタルのケアを受けたことで、大勢がチームや首脳陣の期待を実感し、前向きに取り組む一助になったのも確かだろう。大勢たちのケアをしたメンタルの専門家はキャンプ中、ファームの選手やスタッフにリモートで講演を行った。別の日にはデータ分析や教育問題に詳しいジャーナリストも講演に招かれている。

 川相総監督は言う。

「選手にあれもこれもと押しつけるのではなく、メンタルとかデータ分析とか、いろんな選択肢を与えるのが僕たちの仕事です。こういう講演などを通じ、自分の役に立つものを見つけて、野球に生かしてほしいですね」

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。