【赤坂英一 赤ペン!!】巨人OB・川相昌弘氏が、来年2月の阪神キャンプで臨時コーチをすることになった。
守備と犠打の指導者としては申し分ない。現役時代には533個の犠打世界記録を樹立し、ショートでゴールデン・グラブ賞を6回受賞。引退後は巨人と中日で二、三軍の監督から一軍のヘッドコーチや監督代行まであらゆる経験を積んでいる。
阪神はチーム失策数が今年85個、昨年102個、一昨年89個と3年連続リーグ最悪を記録。久慈、藤本、筒井ら一軍守備コーチが留任した中で、新たな指導者の招聘を望む声も上がっていた。
そこへ、ライバル巨人の川相氏がやってくる。唐突な人事のようにも感じられるが、その川相氏をかねて高く評価していたのが、阪神の元監督で、現在TA(テクニカルアドバイザー)を務めている和田豊氏だ。
和田TAは川相氏の2歳年上の同世代で、現役時代は二塁でゴールデン・グラブ賞を3回受賞し、川相氏と同じ堅実な守備と犠打で知られていた。1988年の56犠打は当時の日本記録であり、川相氏が91年に66犠打で抜いたという縁もある。
現役時代には、試合前のグラウンドで川相氏と和田TAが親しく会話をしている光景をよく見かけた。和田TAは昨年、二軍で臨時コーチをしており、来春はぜひ川相氏と“指導者タッグ”を組んでほしいところ。
さて、川相氏が阪神の選手に何をどう教えるのか。興味のあるファンは、最近出版された川相氏の著書『ベースボールインテリジェンス』(カンゼン)を一読することをお勧めしたい。本書は現役選手と指導者向けの技術論で、大変レベルの高い内容になっている。
例えば、送りバントのサインひとつ取っても、どの試合のどういう場面で敵に悟られないようにサインが出されたのか、実例が細かく書き込まれている。巨人・原監督が阪神戦で重盗のサインを出したシーンなど、非常にリアルで興味深い。
ちなみに、川相氏が阪神戦で決めたバントで、私が最も印象に残っているのは92年7月29日。二死満塁で三塁線に打球を転がし、2点適時打となったバントヒットだ。二死で三塁ベース後方に守り、裏をかかれたオマリーが「カワイ! ツーアウト、バント、ノー!」と文句を言っていた。
来年は、あんな痛快なバントを、阪神の選手が巨人戦で決めるシーンが見たいものである。
☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。












