巨人がDeNAからFA宣言していた梶谷隆幸外野手(32)を獲得すると11日に発表した。9年ぶりの日本一奪還を目指す今オフの補強第1弾。チームにとって明るい話題ではあるが、梶谷のFA加入によってメジャー挑戦か残留かを熟考している菅野智之投手(31)の決断のタイミングがいっそう注目されるという。いったい、どういうことなのか。


 欠けていたピースがピタリとハマった。今季リーグ2位となる打率3割2分3厘をマークし、19本塁打を放った左の外野手の加入。梶谷はDeNAを通じて「14年間在籍した球団には本当に心から感謝しています。またFA権を取得することができたのは、チームの皆さんのおかげだと思っています」と古巣への感謝を述べた。

 新戦力が加わる一方で悩ましい問題も発生する。梶谷は今季推定年俸が7400万円のBランクで、DeNA側は巨人に年俸の60%か、年俸40%に加えて人的補償を求めることができる。人的補償を選択した場合、巨人は保留者名簿から外国人とプロテクトする28人を除いたリストを、契約締結の公示から2週間以内に送る必要がある。

 人的補償を巡っては過去の苦い記憶も残る。13年オフには若手有望株だった一岡が広島に、16年オフも平良がDeNAにそれぞれ流出。また、18年オフには内海が西武、長野が広島と精神的支柱2人が電撃移籍となり、大きな衝撃を与えただけに慎重な対応が求められる。

 そのリスト作成に大きな影響を及ぼすのが、菅野の決断タイミングだ。現在は代理人を通じてメジャー球団と交渉中だが「ポスティング申請者は保留者名簿から外れていないため、人的補償の対象外としたい場合はプロテクトのリストに入れる必要がある」(球界関係者)という。

 米国内は新型コロナのまん延が深刻な状況で来季のメジャー開催も不透明。菅野が巨人残留の道を選べば何ら支障はない。ただ、リストを提出した後に移籍した場合、結果的に菅野のプロテクトに使った1枠で他の選手1人を守れなくなる可能性が生じるというわけだ。故障によって5選手を育成契約としたことで、支配下枠に多少の余裕があるとはいえ、フロント陣にとっては頭の痛いところだろう。

 理想的な展開は、リストを提出する以前に菅野が去就を決めることだが、トントン拍子に事が進むとは限らない。昨オフに巨人からブルージェイズに移籍した山口は申請から基本合意に達するまで約1か月を要し、自由契約が公示されたのは年が明けた1月6日だった。同じくDeNAからレイズに移籍した筒香も1月21日で、こちらも越年している。

 当の菅野はこの日、東京・両国国技館で開催された「シーズン感謝祭」で「僕は来年どこで何をしているのか分からないので…。どこのチームに行ってもやるべきことは変わらないので頑張ります」と慎重に言葉を選んだ。〝菅野枠〟の扱いをどうするのか。そして本人はいつ、どのような決断を下すのか――。