来季は崖っ縁からのスタートとなりそうだ。

 巨人・小林誠司捕手(31)への風当たりが過去最大級に強まっている。今季は2度のアクシデントに見舞われ、日本シリーズ出場は絶望的な状況。悲願の日本一奪回に向けて重要ピースを失った原辰徳監督(62)の歯がゆさは頂点に達しており、かつてない超激辛発言も飛び出した。その言葉に込められた〝真意〟とは――。 

 14日の今季最終戦と21日からの日本シリーズを控えるチームは、13日もジャイアンツ球場で全体練習を行った。ただ、その輪の中に背番号22の姿はなかった。

 今季の小林はとことんツキにも見放された。開幕からわずか3戦目の6月21日に左手首に死球を受けて左尺骨を骨折。約3か月の長期離脱を経て9月中旬に一軍復帰したが、打撃不振が改善されず、10月18日からファームで再調整となっていた。

 すると今度は、再起をかけた二軍戦でワンバウンド投球を止めた際に右手人さし指を負傷。いずれもプレーの中のアクシデントによるものだが、日本シリーズまでの完治は見込めなくなってしまった。

 こうした状況にじくじたる思いを募らせていたのが原監督だった。報道陣を前に捕手陣への話題に及んだ際、かつてないほどの〝毒ガス〟が名指しで噴射された。

「小林は野球選手じゃないもん。『元』だもん」

 比喩にしても、かなり刺激的な言い回しだっただけに、その場が一瞬にして凍りついたのは言うまでもない。その発言の真意について、指揮官に改めて聞くとこう説明した。

「(試合に出られないほどの)ケガをしてるって野球選手じゃないよ、そんなの。野球選手って野球ができることを野球選手って言うんだよな。やっぱり職場放棄ですよ。職場放棄ほど社会人としていけないことはないでしょう。仕事ができる、できないはともかくとしてもね。職場放棄はやっぱり許されない」

 つまりはケガをした経緯はさて置き、結果として戦力になれないのであれば〝元選手〟にすぎないということ。

 これまでにも小林には奮起を促す意味を込めて時折厳しい言葉を送ってきたが、球界屈指の強肩や体の頑健さは誰よりも高く評価してきた。そして大卒7年目にして、今季推定年俸も初めて1億円の大台にも到達。同学年の菅野や丸が中心選手に定着しているにもかかわらず…との思いもあったのかもしれない。

 また、現実問題として小林の再離脱で首脳陣の選択肢が一つ失われたことは確かだ。原監督も「(二軍から)上がる人いないよ」としており、大城、炭谷、岸田の3人体制で日本シリーズを戦い抜くしかない。

 相手はソフトバンクかロッテか。どちらと覇を競うにしても機動力があるチームだけに、小林の肩を生かせないことへのフラストレーションもあったのか…。さまざまな要因が重なり、前述の辛らつ発言につながったようだ。

 いずれにせよ、出場10試合にとどまり、打率5分6厘、0本塁打、0打点で2020年を終える小林。ガタ落ちした評価と信頼を取り戻す来季の巻き返しが期待される。