【取材の裏側 現場ノート】陸上女子1万メートルで日本歴代2位のタイム(30分45秒21)を持つ不破聖衣来(拓大2年)と指導する五十嵐利治監督の〝師弟コンビ〟は、覚悟を決めて歩みを進めている。
世界選手権(7月、米オレゴン州)の代表選考会を兼ねた1万メートルの日本選手権(7日、東京・国立競技場)を前に、一番の注目を集めていたのが不破だった。昨年10月に行われた全日本大学女子駅伝の5区で区間新記録をマークすると、レースのたびに好走。一躍ニューヒロインに名乗り出た。しかし、同選手権はケガの影響もあって欠場。調整の一環で4月の日本学生個人選手権に出場していたこともあり、一部のファンからは「中途半端なことをしているから日本選手権に出られないんだ」などと批判の声が上がっていた。
誹謗中傷は不破や五十嵐監督の耳にも入っている。ただ、先を見据えているからこそ、無理はしなかった。〝師弟コンビ〟が最大の目標に掲げているのは、マラソンでの2028年ロサンゼルス五輪金メダルだ。先日五十嵐監督に話をうかがった際にも「今無理して(日本選手権に)出て、一番狙おうとしている五輪のマラソンで走れなかったら一番悔いが残る。五輪でメダルを目指すプロセスの中で、最終的な目標を明確にしておけば、今起きている状況もしっかり乗り切れると思います」と決断の意図を説明した上で、改めて展望を語ってくれた。
今回の欠場で世界選手権の代表入りは絶望的となったが、負の側面ばかりではない。五輪4大会出場の福士加代子氏が「この経験によって、この状態になったらこれ以上はやらない方がいいというような加減が分かり、自分の体の声が聞けるようになるのでは」と指摘するように、ケガを通して学ぶこともある。今後さらなる進化を目指していく中で、ケガと隣り合わせの練習に取り組む機会も出てくるだろう。その際に自らの限界値が分かれば、ケガのリスクを減らすことができる。
3月に19歳を迎えたばかりの不破。高校時代はケガに泣いたこともあり、まだ体が完全にでき上がっているとは言い難い。そこで五十嵐監督は「多分夏まで大会に出ることはないと思うので、まずはこの期間にじっくり体を治していくところに重点を置きたい」と長期的なプランを描いており、食事面や筋力トレーニングはもちろん、コンディショニングトレーニング等も取り入れ、ダイナミックなフォームに耐えられる体づくりに励んでいる。
目先の栄光よりも未来の栄光を選択した不破なら、きっと今回の経験をプラスに変えてくれるはず。04年アテネ五輪金メダルの野口みずき氏以来、女子日本勢はマラソンのメダルから遠ざかっている。6年後はロサンゼルスの地で最高の笑顔が見られるのを楽しみにしたい。
(五輪担当・中西崇太)












