陸上女子1万メートルで日本歴代2位のタイム(30分45秒21)を持つ不破聖衣来(拓大2年)は、未来を見据えた判断を下した。

 昨年10月に行われた全日本大学女子駅伝の5区でシドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子氏が「スターが誕生しましたね」と舌を巻くほどの走りで区間賞に輝き、一躍脚光を浴びた。そんな不破は「一番の目標は来年の世界選手権なので、そこでしっかり戦えるようになりたい」と世界選手権(7月、米オレゴン州)の出場を直近の目標に掲げてきた。

 しかし、1月の全国都道府県対抗女子駅伝後に負傷。右足のアキレス腱(けん)周囲炎の影響で、ジョギングを再開したの先月7日から。同17日に実施された日本学生個人選手権の5000メートルでは最下位に沈んだ。指導する五十嵐利治監督は「何をどうすればいいかの課題も見えている」と話していたものの、世界選手権の日本代表選考会を兼ねた1万メートルの日本選手権(7日、東京・国立競技場)を欠場することになり、代表入りが絶望的となった。

 万全な状態でスタートラインに立つことができず、苦渋の決断を強いられた。ただ、かねて不破と五十嵐監督は2024年パリ五輪にトラック種目で出場し、28年ロサンゼルス五輪はマラソンで金メダルを目指していくプランを描いている。6年後の大舞台を視野に入れているからこそ、目先の栄光よりも、その先の目標を選択したのだ。

 不破の心情もできる限り尊重してきた。不破は〝1%の可能性に対して100%の努力〟を重ね、わずかな望みに全てを懸けてきた。その姿を見た五十嵐監督は「100%努力をさせて納得した上で棄権をさせないと、モヤモヤしてしまうので」とギリギリまで不破の意向に沿ったサポートをしてきた。「監督として無力感を感じております」と悔しさをにじませたが、選手ファーストを貫き通した。

 とはいえ、落ち込んでばかりはいられない。五十嵐監督は「一度体をリセットさせて、またみなさんに感動を与えられるような走りをお見せできるように努力して参ります」と決意表明。ここで立ち止まるほど不破と五十嵐監督は弱くない。壁を乗り越え、さらなる成長を遂げてくれるはずだ。