〝玉砕〟も想定内だ。陸上日本学生個人選手権最終日(17日、神奈川・レモンガススタジアム平塚)、女子5000メートルで不破聖衣来(拓大2年)は17分30秒45でまさかの最下位に沈んだ。それでも、暗いムードは一切ない。不破の視線は世界を向いているからだ。

 1月の全国都道府県対抗女子駅伝後に右足のアキレス腱を負傷。五十嵐利治監督は万全な状態で走れない不破に対する誹謗中傷を心配していたが、当の本人は「どんなに批判やバッシングをされても私は全然大丈夫です」ときっぱり。かねて世界選手権(7月、米国)の代表選考会を兼ねた1万メートルの日本選手権(5月7日、国立競技場)に照準を合わせており、欠場という選択視はなかった。不破の固い決意に五十嵐監督は「その先を見たときに、100%努力をさせて納得した上で棄権をさせないとモヤモヤしてしまうので」と背中を押した。

 なぜ、不破の思いを尊重したのか。そこには2人にしか分からない〝信頼関係〟がある。かつて五十嵐監督は本紙に次のように明かしていた。「入学当初はまだ教えを素直に100%受け入れることはなかったが、5月ごろからは私のことを信じ切って行動してくれるようになりました。それは本当にすごいと思っていて、私自身も下手なことを言えないし、中途半端のことはできないですよね」。不破が絶大な信頼を置くからこそ、五十嵐監督も精いっぱい応えようとしているのだ。

 日本選手権で3位以内に入れば、世界選手権の代表が決まる。「日本選手権も諦めていない。残りの3週間でどう焦点を置いてやるか」と五十嵐監督。二人三脚で世界への扉を切り開くつもりだ。