新日本プロレスの内藤哲也(37)に23日、非情な休養勧告が出された。前夜はジェイ・ホワイト(26)に敗れ、IWGPインターコンチネンタル(IC)王座から陥落。IWGPヘビー級王座との2冠の野望が振り出しに戻り、ショックを隠し切れない状況に追い打ちをかけるかのように、父・賢一さん(64)の言葉で改めて厳しい現実と向き合うことになった。
試合後も無言を貫いた衝撃の敗戦から一夜明け、内藤に取材を申し込むと神戸市内のファミレスに緊急招集がかかった。だが久々の“聖地”にも前王者の表情は暗い。「最後までジェイのペースで試合をしてしまったかな。G1で遠のいたはずの2冠が、飯伏(幸太)の発言でまた近づいたと思った矢先にベルトを失ってしまった。今はどこに進めばいいのか、全く見えてこないですね…」と珍しく弱音を吐く。
と、その時だ。「哲也…探したぞ」と、どこからともなく父の賢一さんが来店。4年前に勤務先を退職後は、全国の会場で息子の雄姿を見届けることをライフワークにしており、神戸に駆けつけていたのだ。さりげなく同席し、シーフードパエリアを注文するや「勝ち負けの部分は仕方がない。ただここ最近、体を酷使しすぎじゃないかと。そりゃ、ベルトを取ってほしい気持ちはあるけど、若くはないんだし、ところどころ休むことも視野に入れてもいいんじゃないか?」と気遣った。
内藤はG1クライマックス後も米国、英国に遠征。オフのないままシリーズに突入と、団体内の他選手と比べ過密日程が続く。長年その姿を近くで見てきた父の言葉は重いが、フル出場に強いこだわりを持つ息子はかたくなだった。
「何度も言うように、今の俺は今しか見せられない。気持ちはありがたいし、結果が出てない事実は重く受け止めなければいけないけど…。俺も状況が状況だけに、今、休むと新日本の早い流れに置いていかれ、東京ドーム出場さえかなわなくなってしまうかもしれないからね」。まさに親の心子知らずだ。
それでも賢一さんが「哲也、プロレスを辞めた後も人生は続くんだぞ。俺は…」となおも食い下がったところで、内藤は「おっと。こんな話、メディアの前でするものじゃないよ、パドレ(スペイン語で父さん)。東スポさん、悪いけど親子水入らずで話したいから、少しだけ席を外してくれないかな」と提案。しかし時間を置いて戻ってみると2人の姿はなく、テーブルの上には伝票だけが残されていた。