【箱根駅伝】独走V6の青学大 OB神野大地が語る名将・原監督の “人心掌握術”

2022年01月04日 06時15分

胴上げされる青学大・原監督(代表撮影)
胴上げされる青学大・原監督(代表撮影)

 やはり名将はひと味違った。第98回東京箱根間往復大学駅伝競走(2、3日)は、青学大が10時間43分42秒の大会新記録で2年ぶり6度目の優勝。2位順大に10分51秒差をつける圧巻のレース運びだった。出雲駅伝、全日本大学駅伝で2位に終わった一方で、今大会は原晋監督(54)の采配が随所で的中。なぜ、勝利を引き寄せることができたのか。青学大OBで「3代目山の神」として箱根路を沸かせた神野大地(28=セルソース)が明かした〝原マジック〟の神髄とは――。


 指揮官の〝カンピューター〟が本領発揮だ。当初は岸本大紀(3年)と佐藤一世(2年)の主力2人を往路で起用するプランを立てていたが、原監督は「夏合宿以降、100%(の練習)をこなせなかった」と方針を転換した。今大会は3区に太田蒼生、5区に若林宏樹と2人の1年生を抜てき。太田は区間2位の走りでチームを首位に押し上げると、若林は区間3位の好走で往路のゴールテープを切った。そして、満を持して復路の7区に岸本、8区に佐藤を起用。ともに後続とのリードを広げる完璧な走りで勝利を決定づけた。

 同じ過ちは繰り返さない。全日本大学駅伝では「私の采配、指示ミスだった」と最終8区で駒大に競り負けた。戦力が充実するあまり、他大学の監督からは「迷いすぎではないか」との声も上がっていた。しかし、原監督は「日々の学生との共同生活や朝練習をする中で、なんとなく感じる部分がある。日々のしぐさ、初動作などから感じるものが出てくる」と信念を貫いた。

「選手の能力」「状態」「練習消化率」「コース適正」の4項目と照らし合わせながら、多角的な視点で判断。何度もチームを優勝に導いた名将の「ひらめき」について、まな弟子の神野は「原監督の良さは、選手を常に練習で観察して、同じ練習をしている中でも『このメンバーでいく!』みたいな感じでこれまで勝ってきていた」と証言。適材適所の区間配置で選手の能力を最大限に引き出してきたという。

 選手個々の主体性の向上にも取り組んできた。原監督は「学生たちは自ら立つ『自立』、自分を律する『自律』を持っている。自分に足りないのは何か、課題、目標は何かというのを一人ひとりが考えて実行するシステムをチーム全体で浸透している」と胸を張るが、神野もこう明かす。

「やっぱり原監督だけが『勝つぞ、勝つぞ』と言っていても、なかなか選手もついていくのが難しいかもしれない。今の青学は選手が『優勝したい』、原監督は『選手が優勝したいって言っているんだったら、じゃあ優勝を目指そうか』っていうチームだと思う。そこが青学のいいところ」

 世間的には〝原監督あっての青学大〟とみられがちだが、実情は違う。学生が中心となって物事を考えたり、選手間でもミーティングをする機会が非常に多いという。

 さらに、原監督はマネジメント力にも定評がある。青学大と言えば、毎年大会前に作戦名を公表することでも有名。神野が主力として初優勝を経験した第91回大会は「ワクワク大作戦」を発令した。神野は「優勝狙えるチーム状況のときに、作戦名を聞いた僕らとしては『会見で何か言っているよ』という感じだったけど、結果的に『ワクワク大作戦』という言葉に乗せられていたように感じた」と明かす。

 今大会は原監督が「史上最強軍団」と自負する中で「パワフル大作戦」を公言することで、選手たちに攻めの姿勢を浸透させた。神野は「最後の原監督のちょっとしたひと言みたいなもので、選手のメンタル状況がよくなったりとか、気持ち的に少し楽に走れたりとか、気持ち的にワクワク度が増したりとかがあると思う。そのへんが原監督の上手なところだと思う」と振り返った。

 原監督が随所にちりばめたピースが重なり合い「パワフル大作戦」は見事に大成功。「ほんのわずかな差で走れた選手が表に出ているが、今回選ばれなかった補欠とのレベルは変わらない」。圧倒的な選手層を誇る〝大人の青学大〟に王者の風格が漂ってきた。


【「厚底時代」に筋トレも進化】変化を恐れない姿勢も青学大の強さの秘密だ。近年厚底シューズが主流となる中で、原監督は「故障する部位が随分以前と変わってきた。今までは下肢、シンスプリント系(すね)の故障が多かったのに、お尻周りの故障が増えてきている」と分析。実際に、岸本大紀(3年)は2年時に右股関節を疲労骨折している。

 そこで「青トレ」と呼ばれる体幹トレーニングだけでなく、新たにアウターマッスルも強化。「故障しない体づくり、厚底シューズに対応する動きづくり、補強トレーニングで進化させようとした」と時代に合わせたスタイルで選手たちを飛躍させた。

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