満身創痍で戦い抜いた。フィギュアスケートペアで2026年ミラノ・コルティナ五輪金メダルの〝りくりゅう〟こと三浦璃来(24)、木原龍一(33=ともに木下グループ)が17日、今季限りで現役を引退すると双方のSNSで発表。大舞台で最高の輝きを放った一方で、体は限界に近づいていたという。2人が拠点を置くカナダでメンテナンスに携わっていたマッサージセラピストの青嶋正さんが取材に応じ、快挙の舞台裏を明かした。

 国内外から注目を集めた最強カップルは、惜しまれつつ氷に別れを告げた。ミラノ・コルティナ五輪ではショートプログラム(SP)5位発進だったが、フリーの大逆転劇で頂点の座を奪取。その2人はSNSで「競技人生には区切りをつけますが、私たちはやり切ったという気持ちでいっぱいで、悔いはありません。これまでのすべてが誇りであり、大切な財産です」と心境をつづった。

 2人がカップルを結成したのは2019年夏。相性の良さに衝撃を受けた木原は、頭にチラついていた引退を撤回した。腰や肩、体中が痛んでいたものの、青嶋さんの元で懸命に施術。23年世界選手権で金メダル獲得後の同年夏には腰痛分離症と診断されるなど、常にケガと隣り合わせだった。それでも、青嶋さんが「今すぐ他の選手を施術できるくらいの知識を持っている」と証言するように、セルフケア術を徹底的に学んでコンディション管理に努めていた。

ケガを押して負担の大きいリフトなどの技術を披露していたりくりゅう
ケガを押して負担の大きいリフトなどの技術を披露していたりくりゅう

 集大成の五輪ですべてを出し尽くし、新たな歴史を刻んだ。ただ、その代償は大きかった。青嶋さんは「僕が見ていても、ここも悪い、これもダメかみたいな感じで、オフィシャルに言っていないところもケガをしていた。今回の引退に関して寂しい気持ちもあるが、逆に『あと4年お願いします』と言われても、リンクに立たせられる保証は正直できないくらい」と振り返るほどだ。

 カップル結成当初はケガと無縁だった三浦も、月日を重ねる中で左肩の脱臼がクセとなっていた。青嶋さんは「痛みが取れたから良かったというわけにはいかない。やっぱり恐怖心もあるだろうし、その状態でペアをやらせるのは非常に難しい」と指摘する。2人で一つの作品をつくり上げる競技特性のため、片方の選手のコンディション不良は両選手にとって死活問題。ともに細心の注意を払いながら五輪に向かって歩みを進めていた。

 ギリギリの世界で走ってきた2人は、将来的な指導者転身に意欲を見せている。日本のペア王国化を目指す上で、青嶋さんは「多くの人に自信を持って、自分たちの言葉で経験を伝えていってほしい」とエール。次なる夢への挑戦が幕を開ける。