走り高跳び日本記録保持者・戸辺直人 「こういう時こそ頭で進化」

2020年04月09日 11時00分

1年延期となった大舞台に向けて戸辺の闘志が衰えることはない

【どうなる?東京五輪パラリンピック】1年後、世界の頂点へ――。新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京五輪が来年7月開幕となっただけでなく、7都府県には緊急事態宣言が発令。同時にアスリートの活動範囲は制限されているが、悲観的な意見ばかりではない。本紙の電話取材に応じた陸上男子走り高跳びの日本記録保持者、戸辺直人(28=JAL)は“得意分野”を活用するなどレベルアップの機会と捉えている。

 五輪の1年延期。すでに代表が決まっている競技もあれば、選考会が開かれていない競技もあり、アスリートの置かれている状況も様々だ。陸上のトラック、フィールド種目は後者だが、男子走り高跳びで2メートル35の日本記録保持者はどう感じたのか。

 戸辺 今年に向けて準備をしてきたのでそういう意味では残念だが、今の情勢を考えると仕方のないこと。当初は判断が5月末とあったが、それよりも早い段階で発表してくれたのでよかった。

 とはいえ、競技会が中止となるだけでなく、練習拠点の筑波大でも体育施設の使用ができなくなるなど行動範囲は制限されるばかり。試合時は体脂肪率3%の肉体に仕上げており、免疫力低下によるウイルス感染の可能性も低くないが、そんな不安を一蹴した。

 戸辺 跳べる体にしようと思うと食事量を減らさないといけないので、その分風邪をひくリスクは高くなる。でも、今はしばらく試合がないのでしっかり食べるように心がけているし、今は(体脂肪率)7%台かな。それでも一般的には低い数値? 体感的なものだけど体調はいいというか、そういう感じはする(笑い)。

 大学院時代には“本業”の走り高跳びをテーマに博士論文を制作したことで知られている。助走、踏み切りといった数多くの跳躍動作のデータを採集し、実際に自身で体現。どう記録(数値)に反映されるかをまとめた。ところが、情報量は膨大で競技に専念した卒業後は再び目を通す機会がなかった。

 戸辺 データ分析は時間がかかる作業なので、普段試合に出場したり、遠征に行っているとなかなか手が付けられないものもある。そういったものはこういう状況で調べたり分析したりできるかな。

 思い通りに体を動かせない状況ながらも頭はフル回転させることが可能だ。もちろん、トレーニングをしないわけにもいかない。自身を追い込む環境は自宅や限られたスペースになるが、この時期だからこそできる“地味トレ”があるという。

 戸辺 基本的な体幹の筋力というか、基礎の基礎になる部分。今だと腹斜筋。「あまり使えていないな」という筋肉を意識的にトレーニングすると徐々に高跳びのパフォーマンスも変わってきたりするので、そういうことを中心に。来年になった五輪に向けてはどれだけ土台を固められるかがカギになる。

 五輪で金メダルを目指すハイジャンパーは“猶予期間”でどんな進化を遂げるのか。