打倒・森喜朗で始まった「ジェンダー平等」の暴走 愛知・半田市の伝統文化がめちゃくちゃ

2021年04月03日 05時15分

左から橋本聖子氏、森喜朗氏

 東京五輪の聖火リレーを巡って思わぬ騒動が勃発した。愛知・半田市の一部コースが「男性限定」となっていたことが批判され、同市は「女性も参加可能」に方針転換。ところが、今度は地元の女性から疑問の声が上がるなど波紋が広がっているのだ。大会組織委員会は森喜朗前会長(83)による女性蔑視発言と辞任を契機に「ジェンダー平等推進」を打ち出す一方で、極端な主張がかえって混乱を招くケースも…。五輪開幕まで4か月を切っても止まらない迷走の実態に迫った。

 今回問題となったコースは半田運河を「ちんとろ舟」で渡る約200メートルの区間で、聖火リレーは今月6日に実施予定。ちんとろ舟は江戸時代から続く「ちんとろ祭り」で使用され、女人禁制のため乗船できるのは男性だけと決まっている。もともと半田市側が祭りの普及を目的にリレーのコースとして提案。当初は男性限定で実施する予定で、そのことは組織委側にも伝わっていたという。

 ところが、一部から「五輪の精神に反する」との指摘が寄せられたことで、同市は「女性もOK」と方針転換。組織委の橋本聖子会長(56)も「スタッフやランナーはジェンダー平等に配慮した形で実行委員会にお願いしていた。今回は男女平等の観点から、あくまでもイベントということで男女問わず乗船するように調整したとうかがっている。ご理解とご協力に大変感謝している」と評価した。

 これに疑問を投げかけるのが、ほかならぬ地元サイドだ。半田市観光協会の女性担当者は取材に対して「ジェンダー平等と伝統文化は別の議論です」と前置きした上で、こんな本音を漏らした。

「私は幼いころから男性限定の『ちんとろ舟』を見ていましたが、女性差別と思ったことは一度もありません。逆に別の地区では女性しか乗れない山車(だし)もあります。そういった神事や伝統を五輪憲章に当てはめることがナンセンス。こんな取り上げられ方をされて寂しいですし、この判断は納得いかないですね」

 では一体なぜ、こんなことになったのか。東京五輪全体で男女平等を推進する一連のムーブメントは、組織委の森前会長による女性蔑視発言が発端となった。世界中からバッシングされたことで森前会長は辞任。女性の橋本新会長が誕生し、自ら先頭に立ってジェンダー平等推進の旗振り役を務めてきた経緯がある。

 橋本会長は組織委の女性理事を12人増やして女性比率を21%から42%に引き上げ、小谷実可子スポーツディレクター(54)を責任者にした「ジェンダー平等推進チーム」を設置。ただ、こうした取り組みが一部では疑問視されていた。女性理事の増員にしても、資質より人数合わせを優先したと受け止められ、組織委内部からも「ジェンダー平等の本質をついていない。単なるアピールにしか見えない」との指摘もあった。

 今回の半田市のケースでは、表面的な「平等」を求めたことで地元が混乱。前出の女性も「男女平等と伝統をはき違えている」と言い切った。東京五輪を成功させる上でジェンダー平等は必要不可欠な要素であることは確かな一方で、〝森色一掃〟から始まった一連のムーブメントの課題が浮き彫りとなった格好だ。

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