またも雲行きが怪しくなってきた。体操で五輪個人総合2連覇の内村航平(31=リンガーハット)が〝金メダリスト初〟の新型コロナウイルス陽性となったことを受け、東京・北区のナショナルトレーニングセンター内の体操練習場が利用中止に。来夏の東京五輪開催へ不安は募るばかりだ。

 そんな中、大会組織委員会は観戦チケット払い戻しの概要を発表。すでに販売されたチケットは原則として来年の大会でそのまま利用できるが、延期によって来場が困難となった希望者を対象に、五輪は11月10日未明~同30日午前11時59分、パラリンピックは12月1日未明~同21日午前11時59分まで払い戻しの申請を受け付けるとした。

 その公式リリースにちょっとした〝異変〟があった。組織委関係者が「これを紙に記載するのは初めて」という一文だ。

「もし今後新型コロナウイルス感染症の影響により組織委員会が観戦の機会を提供できなくなった場合は、別途払い戻しを実施させていただく予定です」

 どう見ても、中止や無観客を想定した文言。中止、無観客になった場合でも、きちんと払い戻しに応じますよ…との約束ととれる。にもかかわらず組織委は「中止、無観客は一切検討されていません」の一点張り。「もし」の仮定の中に「中止」「無観客」を頑なに入れようとしないのだ。

 会見後、その真意を関係者に問うと「今、我々がもしもそう(中止、無観客)なったら…などと明示的には言えない。ただ、お客さんが不利にならないよう最大級に配慮した表現にしたつもりです。心配していただきたくないというのが本音。万が一、観戦できない時には必ず払い戻します」と話した。

 やや奥歯に物が挟まった言い方ではあるが、中止や無観客でもチケット所有者の心配は無用。スポンサーの手前もあって言うに言えない組織委の〝裏メッセージ〟がここに隠されている。