【取材の裏側 現場ノート】世界的な名将として知られた日本代表監督を務めたイビチャ・オシムさんは5月1日、オーストリア・グラーツで亡くなった。享年80。2006年ドイツW杯後、日本代表の監督に就任。07年に脳梗塞のため退任するまで日本サッカーの強化に尽力した。

 そんなオシム監督は大のフルーツ好きとしても知られている。ジェフ市原の監督として来日した際、日本の果物の質の高さに驚いたそうで、中でも糖度が高く、ジューシーなスイカにご執心だった。あるとき、インタビューで「スイカ好き」を告白すると、ファンや関係者からの差し入れがスイカばかりになったという。ただ、スイカは大型で1人では食べきれないことから持ち帰ることも多かったそうだが、自宅は季節になると10個以上のスイカが〝常備〟されていたそうだ。

 日本代表監督に就任後、日本人コーチらとの結束を深めたのもフルーツだった。毎週行われていた日本代表スタッフミーティング。オシム監督は就任当初、自身の意向がうまく伝わらず、イライラし、スタッフを怒鳴り散らすこともあるなど、常に緊張感が張りつめていたという。そんな中、反町康治コーチが熊本遠征したお土産として名産の「デコポン」をミーティングに差し入れた。

 すると、いつものように不機嫌で眉間にしわを寄せていたオシム監督が「なんだ、これは」身を乗り出してデコポンを手にし、頭頂部のコブを確認するなど笑顔になったという。フルーツの中でもかんきつ系のものを好む指揮官は、自身がまだ目にしたことがない果物に興奮。スタッフらとフルーツ談議で大盛り上がり。デコポンについて知っている知識をみんなが出し合ったが、ミーティングのあり方も再認識することになった。この一件以降、ミーティングもスムーズに進行するなど名将とスタッフの関係も改善されたそうだ。

 オシムさんもミーティングの日には自ら購入したケーキを差し入れするようになり、クッキーなどのお菓子もテーブルに並ぶようになった。いつも激しい議論が繰り広げられる会議もテーブルの上にスイーツがスイーツが並ぶことで殺伐とした雰囲気も少しは和らぐようになったとのこと。デコポンがキッカケでチーム・オシムの結束は高まったそうだ。

(サッカー担当・三浦憲太郎)