21世紀のプロレス界において、もっとも凶暴かつ乱暴で、あまりに唐突な印象のあったマスクマンが大ハヤブサだ。FMWの2000年6月16日後楽園大会にH(元祖ハヤブサ)対冬木弘道、GOEMONのハンディ戦の13分過ぎ、冬木成敗とH救出のために急きょ降臨。鬼のような大暴れで超満員の後楽園を沸かせた。

 実はHは「超大物を投入する」と予告していたのだが、まさかそれが大ハヤブサだとは誰も想像がつかなかった。元祖の3倍はゴツイ肉体、理不尽大王の胸を引き裂くような豪快な逆水平チョップ、顔面をもろに直撃するグーパンチ…誰がどこからどう見ても、その正体はミスタープロレスこと天龍源一郎だった。

 大ハヤブサは天龍ばりのパワーボムで怨敵・冬木をKOすると、最後はHに預け、無言で引き揚げた。覆面の下はご丁寧にも目の周囲に鮮やかなペイントが…。大ハヤブサはその後も「正義の味方」として登場し、悪党どもを恐怖のどん底に叩き込んだ。

 3年後の03年11月、大ハヤブサは2度目の降臨となるWMF後楽園大会(11月20日)に向けて本紙のインタビューに応じ、福井・勝山市で農家を営む天龍の双子の兄貴であることを明かした。「家督は実家を継がなきゃならんだろう。田植えが終わって米泥棒自警団も暇になったから来たんだ。田植えで鍛えた足腰を甘く見てもらっちゃ困る。それにしても東スポはカラーになってから大根を包むとインクがついちゃうのが玉にキズだな…」と天龍そっくりの顔半分を公開している。

 この試合ではマンモス佐々木と組んでミスター雁之助、BADBOY非道組をボコボコにした。

 大ハヤブサ最後の降臨は、天龍引退前年の天龍プロジェクト14年2月4日の新木場大会。6人タッグで大暴れすると「カーッ、物足りないねえ」と吐き捨て、大雪の中新幹線と在来特急を乗り継いで福井へと帰った。