【広瀬真徳 球界こぼれ話】球場でのプロ野球観戦の醍醐味の一つにイニング間の「催し」がある。各球場ごとに独自性があり、最近では日本ハムの「きつねダンス」が球界を席巻する人気イベントに成長している。
実際に札幌ドームできつねダンスの曲が場内に鳴り響くと、思わず足や指でリズムを取ってしまうから不思議なもの。新庄監督も以前、「なんで踊りたくなるんだろうね」と語っていた中毒性。これには驚かされるばかりだが、日本ハムには他にもファンを楽しませるイニング間のイベントがいくつかある。その一つが「真剣じゃんけん商品券」というゲームである。
主に本拠地試合の6回表終了時に行われるこのイベント。ルールは簡単で、スタンドの観客席からランダムに選ばれたファンの一人が球団マスコットとじゃんけんで勝負。勝てば商品券がもらえ「あいこ」か「負け」なら何ももらえないという単純な企画なのだが、これが意外と面白い。
じゃんけん挑戦者は外野後方の巨大スクリーンに突如映し出されるため、選ばれた人はまず間違いなく動揺、または困惑の表情を見せる。しかも挑戦者は大勢のファンの中から選ばれた喜びに浸る間もなく、球団マスコットとの一発勝負に挑まなければならない。心の準備がないため、じゃんけんに勝った時の喜びようは半端ない。逆にあいこや負けた時の落胆ぶりは相当なもの。この短時間での人間模様や喜怒哀楽。見ていると思わず噴き出してしまう。
さらに、このゲームの面白さを際立たせているのが「賞金の繰り越し制度」だ。
通常、挑戦者が勝てば1万円分の商品券をもらえるが、球団マスコットが「勝ち」、または「あいこ」の場合は翌日の試合に賞金が持ち越される。必然的に賞金が積み上がるケースが増え、今月4日のソフトバンク戦ではついに5万円にまで膨れ上がった。野球観戦に来て、じゃんけんに勝ったら賞金5万円…。挑戦者に選ばれる確率こそ低いものの、これ以上の太っ腹企画はない。スタンドのファンも高額になればなるほど盛り上がりを見せる。きつねダンスほど目立たない恒例行事だが、試合以外でファンを熱狂させるという意味では秀逸な企画だろう。
日本ハムは来季から本拠地が北広島市に建設中の「エスコンフィールドHOKKAIDO」に移転する。この企画が新球場に引き継がれるかは未定のようだが、来場するファンの中には楽しみにしている人も多いはず。きつねダンスとともに、来季続投を願うばかりだが…。さて、どうなるか。
☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。












