3位・広島に2ゲーム差と迫り、Aクラス浮上を狙う阪神は、矢野燿大監督(53)の攻撃面での采配の成否がリーグ後半戦の鍵を握ることになりそうだ。

 もともと「全員で勝つ野球」を掲げレギュラーだけなく、試合中は積極的な選手起用をする虎の将だが、交流戦を終え野手陣の打棒がようやく活発になってきたことも積極采配を後押ししそうだ。

 5月は2割1分6厘と低調だったチーム打率は6月に入り、2割7分7厘と復調。さらには代打成績もリーグ3位の1割9分2厘ながら、出塁率2割9分2厘は同2位、得点圏では同1位の3割4厘と、明らかに打線全体にも〝勝負強さ〟が戻ってきている。

 残り78試合でさらなる浮上を期すために、代打における控え野手の奮闘も不可欠。OBで打撃コーチを務めた柏原純一氏も「あとは中盤以降に逆転する試合をいかに増やせるか。これまで先発投手が少ない失点で我慢していても、打線が全く援護できない試合が数多くあった。ここが変われば勝手に逆転勝ちも増えるだろうし。そのためには監督は勝負するタイミングをこれまでよりも、早めていい。現実、上のチームを追いかけていく立場には変わりはないわけだし」と指摘する。

 ここまで完封負けが15試合。プロ野球記録に迫るペースで量産していることもあり〝動いた〟結果、仮にタクトが裏目に出たとしても動かずに「たら・れば」を残して負けるよりもまだマシというわけだ。

 実際、勝率5割を超えるヤクルト、巨人は9試合の阪神の倍の試合数の逆転勝ち(ヤクルト16、巨人19)を収めている。一方の阪神はここまで6回終了時点でビハインドの展開だと3勝26敗。終盤以降の攻防に大きな課題を残している。投手陣はリーグ1位の防御率2・65と計算の立つ面々がそろっているだけに、後は打線がこれまでよりも早い段階で盛り返すことができるかに尽きる。攻撃時における矢野監督の決断は、今後のシーズンでより重みを増すことになる。