【広瀬真徳 球界こぼれ話】 このところ取材で北海道に来ると「いよいよか」と胸を躍らされることがある。来年3月に北広島市に開場予定の日本ハム本拠地「エスコンフィールド北海道」が着々と完成に近づいているからだ。

 北海道の玄関口・新千歳空港から札幌方面に向かう列車に乗車することおよそ20分。北広島駅を過ぎたころ、左手に目をやると巨大な建造物が視界に現れてくる。地上6階、地下2階の球場建築面積は東京ドームをやや上回る5ヘクタール(5万平方メートル)で、収容人数は3万5000人を見込む。

 今春オープン戦が行われていた3月ごろの現場は、作業車や大量の資材が周辺に置かれ「建築中」という感じが否めなかったが、その後急ピッチで工事が進められたのだろう。外観に関してはもはや完成形に近いと言っていい。先週9日には新球場の象徴でもある可動式屋根も初めて全閉した。竣工は今年12月で、今後は内部作業が本格化するという。来年の開場時にはどんな姿でファンを迎えてくれるのか。

 もっとも、個人的にこの新球場に注目しているのは目新しさや外観だけではない。広さ32ヘクタール(32万平方メートル)を誇る球場を含めた敷地全体の充実度も目を見張るものがある。

 例えば、球場に隣接するエリアにはグランピングやキャンプを含めたアウトドア体験エリアが設置される予定。野球に興味がない人でも楽しめるよう配慮されている。さらに温泉やサウナに入りながら観戦できる施設も併設される。温泉好きにとってこれほど魅力的に感じる球場はない。

 もう10年以上も前のことだが、米メジャー取材で全米の主要球場を訪れた際に感じたのがこの球場敷地内の充実度だった。歴史あるフェンウェイ・パークや旧ヤンキー・スタジアムなどは別としても、比較的新しい球場にはプールや子供向け遊具などが併設され誰もが楽しめる場をつくり出していた。球場に来る来場者が全員野球好きとは限らない。知人や同僚らに誘われて来場する人、球場の雰囲気を楽しみに来る家族連れなどもいる。そんな人たちでも楽しめる野球場こそが娯楽の多様化が進む今の時代には求められる。その意味でも新球場は「ボールパーク」として来場者を魅了するはずだ。

 既存のファンだけでなく球場を通して来場者に野球文化に親しんでもらう次世代型野球場。「世界がまだ見ぬボールパーク」をコンセプトに掲げるだけあって、開場が待ち遠しい。 

 ☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。