【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】阪神・長坂拳弥捕手(28)の活躍に目を細める二軍関係者は多い。

 梅野隆太郎捕手の負傷、登録抹消もあり約2年ぶりの一軍昇格。20日の巨人戦では好機で凡退するなど精彩を欠いたが、すぐに巻き返した。

 21日の同カードは4年ぶりに先発マスク。2回無死一、三塁からセーフティースクイズを決めれば、本職の捕手では3投手を1失点リレーに導き勝利に貢献した。プロ初のヒーローインタビューも経験した。
 その翌日には2年目左腕・伊藤将司のプロ初完封を演出。矢野監督から「拳弥の力もあると思うので、素晴らしかったと思います」と名指しの褒め言葉を引き出した。

 昨季はプロ入り初の一軍出場なしを経験。二軍首脳陣の評価は高かったものの、優勝争いを演じた一軍には呼んでもらえなかった。気付けば大卒6年目。背水の覚悟で臨んだ今季は、周囲の推しもあり一軍キャンプの切符をつかんだ。

 二軍関係者は「宜野座スタートになったのも二軍首脳陣から強い推薦があったから。ファームにいる人間はみんな拳弥推しです」と話す。

 野球に取り組む姿勢はもちろん、捕手としての評価が高く「とにかく周りが見えている。本当に捕手向きですね」と信頼されている。

 それでは何が足りないのか。「矢野監督はキャプテンシーのある坂本誠志郎が好みだとは思うんです。その部分が拳弥に備わっていれば、捕手としての総合力は上だと個人的に思っています。内に秘めるタイプなんで、もうちょっと表に出れば」(前出関係者)と自己表現が課題のようだ。

 矢野監督からすれば長坂は東北福祉大の後輩。だからこそ厳しく接している部分があるのかもしれないが、結果を出せば起用しない手はない。

 主力の離脱中に交流戦で猛アピール。その地位を確固たるものとできるか。長坂のプレーと自己表現力に注目だ。

 ☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。