阪神・矢野監督が来季、大山悠輔内野手(26)を本職の三塁だけでなく、左翼、一塁でも起用していく考えを明かしたことが波紋を広げている。

 現在、甲子園球場で行われている秋季練習で指揮官は「(大山は)来年の春は左翼でちょっと試したい。もちろん(本職は)三塁だし、チームの編成の中で一塁、左翼をやれると、悠輔が打席に立てるようになる」と説明。「悔しいと思うよ。左翼で出て三塁に戻ることもできると思う。左翼をやることがマイナスになることはない。悔しさを持ってチャレンジしてくれればいい」と主砲のプライドを気遣いつつ、来季の構想を語った。

 今季22本塁打を放った一塁手・マルテ、同じく20本塁打の左翼手・サンズの去就が不透明な中、チームとしての〝選択肢〟は今のうちに増やしておきたい。あるいは虎の将来を担うであろう佐藤輝を三塁で固定したいという意図が背後には見え隠れする。だが、4年連続で12球団最多の失策数をマークしている阪神にとって「複数ポジション制」は諸刃の剣となる可能性も秘められている。

 阪神は昨季もマルテを一塁と三塁で起用。遊撃で開幕スタメンを勝ち取った木浪も、シーズン途中からはたびたび二塁で起用された。守備で求められる動きや打球の質が全く異なる複数のポジションを一人の野手に守らせる方針が選手を混乱させ、チーム全体の守備難の一因になったとの批判は当時から根強かった。

 球団OBも「佐藤輝を三塁で固定したいという考えは分かるけど、そうなるとその負担が大山の方にいってしまう。今季も失策の多さがV逸に直結したというのに、また来季も同じことを繰り返してしまうのか」と顔をしかめる。

 ゲームに勝利するためには、少しでも打撃状態のいい野手を8人並べて使いたい。だが、そうすると守備難が顔を出す…。複雑かつ矛盾を内包した勝利への〝最適解〟は来季こそ見つかるのか――。