阪神は18日、中日戦(甲子園)に1―0で快勝した。首位をひた走るチームにおいてMVP級の働きを披露しているのが不動の守護神、ロベルト・スアレス投手(30)だ。今季は25セーブでセーブ王のタイトルを獲得した昨年を上回るペース。自慢の剛速球も自己最速の163キロを計測するなど、さらに進化を遂げ、昨年に引き続きMLBスカウトが熱視線を送っている。

 この日のネット裏にはカブス、レンジャーズ、ブルージェイズ、ツインズなど4球団のMLBスカウト陣が集結した。お目当ては中日のR・マルティネスとスアレスの両クローザー。今季で契約が切れる竜の守護神と同様、スカウト陣が「さらに実力が上がった」と話すのが虎の守護神・スアレスだ。

 昨季、猛虎入りしたスアレスは引退した藤川球児氏(現SA)の後継者として、抑えを務めると25セーブでセーブ王の初タイトルを獲得。かねてからメジャー志向があり、昨オフも一度、自由契約になり米球界挑戦の機会を伺ったが、矢野監督ら虎関係者の熱心な慰留もあり、チーム残留を決意し、推定約2億6000万円の2年契約で阪神と再契約。その際、2年目はスアレスの意向次第で、次年度の契約継続の可否を決めるオプションが盛り込まれ、昨年に続く好パフォーマンスとチームの好成績が達成された際はMLB挑戦再検討も可能な内容になっていると米関係者は認知している。複数年契約中の右腕をMLB側が獲得候補にリストアップしているのはそのためだ。

 今季のスアレスは、ここまで47試合で43試合で無失点投球。来日初の30セーブも突破し、防御率1・17、47回1/3を投げ7失点、四球はわずか5、本塁打被弾は1本もない。別日に視察を済ませたナ・リーグ西地区のスカウトは「メジャーのどのチームのブルペンにも入れる」と突出した能力に改めてほれ直した様子だ。

 スアレス最大の武器は今季、自己最速163キロを計測した直球と言われるが、注目ポイントは〝速さ〟ではなく〝軌道〟だという。

「速さは直球だけど、軌道はほぼツーシーム。だから球が上がらない。メジャーでも奪三振率の高いセットアッパーやクローザーは大勢いるけどスアレスは全く別のタイプ。打ちにくさはむこう(米国)でも変わらないはずだし『球の上がらない投手』として通用する」(同スカウト)

 この日まで奪三振は38と1イニング平均で1個以下。一方でゴロアウト率は全体の45%を超えている点が根拠だろう。

 スアレスはこの日も1点リードの最終回に登場。2人の走者を背負ったが、最後は二死一、二塁で福留をこの日最速の159キロで空振り三振に仕留め「何とかセーブを挙げられて、勝ちで締めくくれてよかった」とリーグ独走の今季32個目のセーブを振り返った。

 すでに成績は昨季を上回り、チームも16年ぶりのVへまっしぐら。チームと自分の夢の両方をたぐり寄せ続け、大願成就となった場合はいよいよ注目の存在となりそうだ。