【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】6年ぶりの開幕3連勝! 就任3年目の矢野燿大監督(52)率いる阪神が、会心の開幕スタートを決めた。セ・リーグ唯一の全勝発進となり、単独首位と最高のスタートを切ったわけだが、こうなると思い起こされるのが、オープン戦Vの勢いそのままに開幕7連勝を決めて、大きな盛り上がりを見せた2002年シーズンとの共通点だ。当時と今ではどう違うのか。このまま16年ぶりの優勝まで突っ走れるのか。期待はふくらむ一方だ。

 あのシーズン、胸がザワついたのと感覚が似ている。19年前の2002年、星野阪神1年目だ。

 3月30日の巨人との開幕戦(東京ドーム)に3―1で勝利。2本塁打などで上原浩治を攻略し、井川慶が完投勝利を収めた。この試合、星野監督は「俺が決めた開幕のベストメンバーやから」と選手交代を一切、行わず鉄の意思をみせた。

 当時の上原が「去年まで阪神は最下位かもしれないけど、同じプロやねんし紙一重よ。ちょっとのことで立場はすぐに変わるから。僕は阪神が弱いなんて思ったことないよ」と話したことを今でも覚えている。

 02年の阪神はオープン戦から勝ちにこだわり、15勝3敗2分で優勝。開幕カードで巨人に連勝するとそのまま7連勝と、ロケットスタートを決めた。最終的には主力の相次ぐ故障も重なり、夏場に失速。4位に沈んだのだが、今シーズンの虎には失速を想像させない底力を感じる。

 就任1年目から3位、2位と階段を登ってきた矢野阪神。オープン戦を9勝2敗2分で優勝し、26日の開幕からヤクルト相手に3連勝と最高のスタート切った。怒涛の7連勝で虎党のハートをつかんだあのシーズンもワクワクしたが、今年の阪神にはまだ見ぬ勢いも感じてしまうのだ。

 02年の開幕時点でのオーダーは赤星、今岡、片岡、アリアス、桧山、坪井、矢野、藤本、井川。バランスが取れてはいるが、それまでは4年連続最下位のチームだった。当時の赤星が「優勝を狙うぞというより、これからが楽しみな発展途上のチームでした」と話していたように、巨人とは歴然とした差があった。

 だが、今年はどうだ。もともと、12球団屈指の投手陣は健在。開幕オーダーの近本、糸原、マルテ、大山、サンズ、佐藤輝、梅野、木浪、藤浪のメンバーも強力だ。超人・糸井ですらレギュラーではない。

 2年連続盗塁王の近本、実力でつかんだ4番の大山、3年連続ゴールデングラブの正捕手・梅野と生え抜き中心選手が充実。さらに、ドラフト1位・佐藤輝の加入で破壊力が増した。マルテ、サンズの助っ人も日本野球への慣れを感じさせ、すこぶる視界良好にみえる。

 そこに加えて、韓国球界から加入予定の投打の助っ人がまだ合流できていないとあって、選手層の厚さは計り知れない。

 加入予定のメル・ロハス・ジュニアはKBOで昨季打率3割4分9厘、47本塁打、135打点。ラウル・アルカンタラは同20勝2敗、防御率2・54と期待は膨らむ。同等の成績をNPBで残せる保証はないとはいえ、プラス材料しか思い浮かばないのが現状だ。

 心配があるとすればコロナ禍くらいか。昨年もあったように、チーム内での集団感染など不測の事態が起これば混乱は避けられない。とはいえ、そうした不安も無理に探せばの話であり、チーム自体に大きな欠点は見当たらない。

 悲願の16年ぶりのリーグ優勝、36年ぶりの日本一へ。矢野阪神が春からフィーバーの予感を漂わせている。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。