【平岡洋二 連載コラム】名門・亜細亜大学を指導して初のビールかけ

2020年09月24日 11時00分

亜大野球部成績の推移

【平岡洋二「アスリートの解体書」(24)】プロ以上と言っても過言ではない充実した環境。全寮制。同敷地内に公式戦の舞台となる神宮球場と同じ人工芝のスタンド付き球場やサブグラウンド。トレーニングルームに人工芝のグラウンドがさらに1面。陸上トラックも併設。25回のリーグ優勝を誇り、多くのプロ野球選手を輩出し続けているのが東都の名門・亜細亜大学硬式野球部だ。

「戦国東都」のキャッチフレーズどおり最終戦の結果次第では5チームが勝ち点3の可能性すらあった大混戦を制して、2015年秋季、亜細亜大学が3季ぶりの優勝を成し遂げた。1年前、秋季リーグで7連覇を狙っていたが、その可能性が消滅した段階で長い歴史のある大学野球界の中でも象徴的存在の亜細亜大学にとっては、革新的、いやいわば実験的とも言える初の取り組みをスタートさせた。というのも依頼を受けた私の要望は「本格的なウエートトレーニングを始めるのであれば、トレーニングとしてのランニングをやめてもらえないか」というものであったからだ。

 それに対しての生田勉監督の返事は「分かりました」。柔軟性のある思考の持ち主であることが名将たるゆえんだと感心したものであった。実は「野球」と「ランニング」は表裏一体、切っても切り離せない関係と言っても過言ではない。「あの亜細亜が…」と、一部野球関係者の間ではひそかな話題となっていたと聞いた。

 まず、ウエートトレーニングの必要性を理解させる座学や施設の大幅改善。フォーム練習から始まり、基礎から上級レベルへと展開したトレーニングの進捗状況は、名門チームの意識の高い選手ならではの求める以上とも言える充実したものとなった。結果、約20%の筋力アップとそれに伴う3~5キロ程度の体重増の成果を見たが、取り組み姿勢を含め充実した内容に比べて期待したほどの伸びが見られなかった要因は、プロ以上とも言える伝統校ならではの総運動量の多さに尽きる。サプリメントを含めた栄養摂取状況も良好だったにもかかわらずだ。

 成績の推移を別表にまとめてみた。

 前回の優勝時(14年春季リーグ)の成績と比較すると、打率は約2分、長打数と動きの指標となる盗塁数は約2倍とそれぞれ伸びており、しかも失策数は減少している。そして、第46回明治神宮野球大会も制し、大学野球日本一の栄冠に輝いた。

 2年ぶり5回目なのだから現実の目標が「日本一」のチーム。勝つのが当たり前のチームの指導は内心プレッシャーもあった。東都大学野球秋季リーグ優勝に引き続き日本一奪回と翌年の春季リーグ優勝と合わせて最低限の責任は果たせたので本音は「一安心」。生涯初の「ビールかけ」も経験させてもらって2年間の指導を終えた。

 ☆ひらおか・ようじ「トレーニングクラブ アスリート」代表。広島県尾道市出身。広島大学教育学部卒業後、広島県警に勤務。県警での体育指導を経験した後、退職しトレーニングの本場である米国で研修を積み、1989年広島市内に「トレーニングクラブ アスリート」を設立。金本知憲氏(前阪神監督)や新井貴浩氏(元広島)、丸佳浩(巨人)ら200人に及ぶプロ野球選手を始めJリーグ・サンフレッチェ広島やVリーグ・JTサンダーズ広島など数多くのトップアスリートを指導する。また社会人野球や大学野球、高校野球、ホッケー日本代表などアマチュア競技のトレーニング指導にも携わり選手育成に尽力。JOC強化スタッフ、フィットネスコーチなどを歴任した。実践的なトレーニング方法の普及のためトレーナーを養成する専門学校での講義なども行っている。ジムのHPは「athlete―gym.com」。

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