守備妨害誘った? 巨人・若林の〝演技疑惑〟を元審判部副部長が解説

2020年09月17日 21時28分

陽川(手前)の「守備妨害」を巡り激しく抗議した矢野監督だが判定は覆らず

 あれは故意なのか。それとも…。17日に行われた巨人―阪神戦(東京ドーム)で微妙なプレーがあった。

 初回、阪神の攻撃。二死満塁で、打者の木浪は二塁へ高いバウンドのゴロを放った。ここで打球を処理しようと前進してきた二塁手・若林と一塁走者・陽川が接触。走者の陽川が「守備妨害」を宣告され、アウトになった。

 しかし、接触を避けようとした陽川に対し、若林が左手を故意に差し出して自ら当たりにいったようにも見えるため、ネット上では「あれはわざとだろ」「若林は演技している」「走塁妨害じゃないのか」などと若林に対する批判が噴出。阪神・矢野監督の抗議も受け入れられず、判定通り試合は続行された。

 実際のところはどうなのか。元NPB審判部副部長の五十嵐洋一氏にこのプレーの検証をお願いしてみた。

「難しいプレーだと思いますが、審判の立場で言えば、これは守備妨害をとらなきゃ仕方がない。大原則として『打球を処理する守備優先』というものがあるからです。打球に対して真っすぐ行かないなど、明らかな故意であるならばオブストラクション(走塁妨害)をとることはできます。今回、若林は左手を出してはいますが、打球に真っすぐ行っている。左手を出したのも、走者との激突を避けるためのとっさの動作だったのかもしれない。抗議してきた矢野監督に対しても、審判は『故意に見えるかもしれませんが、ボールを捕りに行っている。守備優先が大原則ですから』と説明しているはずです」

 また、五十嵐氏は若林の〝意図〟についてもこう言及した。

「内野安打になりそうな高いバウンドのゴロなので、守備妨害を狙おうという意図があったのかもしれない。そういう意味では巨人サイドから見れば自然を装った好プレー。ただ、審判の鉄則は、目の前で起きた出来事を正確に判定することで、選手の意図に思いを巡らせてはいけない。故意かもしれないが『明らかな故意』と言い切れないプレーは、目の前の事象に従って判定するだけなのです」


 いがらし・よういち 1946年9月23日生まれ。東京都出身。67年にパ・リーグ審判部に入り、98年に退任するまで2833試合に出場。オールスターは5回、日本シリーズには9回出場している。84年の球宴では巨人・江川の8者連続三振を球審として、86年は史上初となった日本シリーズ第8戦を球審として、94年の日本シリーズ第6戦では長嶋巨人初の日本一達成試合を球審として裁いた。元審判部副部長。