あのボヤキがよみがえる――。6月29日は、2月11日に亡くなった、野村克也さんの85回目の誕生日だ。そこで東スポは、これまで数々の話題を提供してくれたノムさんに感謝と敬意を込め、楽天監督最終年となった、2009年シーズンのボヤキを一挙公開! 当時、毎週火曜日に連載だった「ノムさんのボヤ記」を完全復刻し、定期的にアップしていきます。1年間完全密着で抽出した珠玉のボヤキの数々を、当時を懐かしみながらお楽しみください。

【復刻! ノムさんのボヤ記①】 昨年オフに1年の契約延長を結び、今季がラストイヤーとなる楽天・野村克也監督(73)を本紙は1年間完全密着します。他紙では決して読むことのできないノムさんの本音トークやボヤキを一週間分まとめて掲載! これを読めばプロ野球が100倍楽しめます。
  
 2009年 3月31日 (開幕カードで激突する日本ハム対策について)

 稲葉(篤紀)の前にランナーを出してはいかん。稲葉はインハイとアウトローをいかに攻めるかだな。全日本の4番にも穴があるわ。

(つなぎの4番と言われていたことに)もともと(野球は)団体競技なのに、今さら何を言ってるんだ。つなぐのは当たり前やないか。よくそれで世界一になったもんだ。

 オレだって(現役時代、4番だった時)5番打者に「何とかお前に回すからな」と言ってたぞ。3番には「お前が(ランナーに)出たら走るか?」と声を掛けていたし。まあそういう意識が(日本代表メンバーには)なかったんだろうな。

 4月1日 (評論家の江本孟紀氏が楽天を最下位に予想)

 オレがいるチームを毎年最下位に予想するんや。ホンマ恩知らずや。東映で敗戦処理だったのを(南海時代に)拾ってやったんだぞ。でも、オレが監督じゃなかったら、楽天をどう予想するかな。選手層が薄い? そうか…。西武、オリックス、日本ハム、ソフトバンク…やっぱり(楽天は)最下位か。

 4月2日 (練習中に稲葉が挨拶に訪れ)
 お土産はないのか? ダルビッシュ攻略法、なんかいいヒントはないか? 内緒で教えてくれ。将来は日本ハムの監督だろ。稲葉監督の下でオレがスコアラーってのはどうだ? いいデータ出すよ。

(09年WBCの会見で、原辰徳監督のコメントが独特の言い回しだったことに)原は何を言っているのか、よう分からん。イライラするわ。スッと言えばいいのに考えて、言葉を選んで、話している。ウケる言葉を考えてな。ウチも(原監督が連呼していた)1ウェイとか2ウェイで行くかな。

 4月3日 (開幕戦で楽天は日本ハム・ダルビッシュ有を攻略して3―1で勝利。楽天のエース・岩隈久志が6回1失点、59球で降板)

 岩隈は50~60球で終わってもらっちゃ困るんだよ。70(球)までなら、なんとかなるんだが。でも無理してつぶすわけにもイカンし。彼の心配はただ一つ!「(肩ひじが)張ってきました。限界です」や。

 予期せぬ時に言われる。今日は最低7回までいくと思ってたから(ベンチで)「今、何球だ?」ばかり聞いていたよ。しかし、(岩隈は)WBCではあんなに投げてたのに。アンチ野村派か(笑い)?

(自身の開幕戦連敗が7でストップ)そうか、止まっちゃったか。不滅の成績を残してサヨナラしたかったけど…もう不滅か。

 4月4日 (6―5で2連勝も9回に日本ハム・スレッジにあわやサヨナラ弾となる大ファウルを打たれて)

 生きた心地がしない。こんな試合が続いたら死んじゃうぞ。

(終盤、左打者が続く場面であえて右サイドスローの川岸強を起用)左打者対策で胸元にくるカットボールを覚えたからな。皆川(睦雄氏=故人)があれを覚えて30勝(1968年に31勝、通算221勝)したんだ。同じサイドスローでな。南海で困っていた時に「小さいスライダーを投げられないか」って言ったんだ。(川岸は)あれで自信をつけてくれれば。賭けだったけどな。もし(起用が失敗して)無様な負け方をしていたら、オレが辞表を出せばいいだけのことや。

 4月5日 (延長11回9―6で開幕3連勝)

 そういや、テポドンは落ちたのか? (ロケットスタートに引っ掛けて)楽天ミサイルはどこに落ちるか。(落ちずに)世界一周してきたりしてな。

(試合終了が午後6時すぎで札幌―仙台の最終便に間に合わず)帰れなくなっちゃったよ。でも日曜だからススキノはどこも開いてないんだよな。

(荷物だけ仙台に届けられたことに)パンツ着替えられないやんか。まあ、ずっと同じだけどな(連勝中はゲンをかついでパンツを替えないため)。 臭うか? 何色かって? コレ(ユニホームを指差し)と同じ(楽天カラーのクリムゾンレッド)。見せようか(と言いながら、ベルトに手を掛けるも周囲に止められる)。

〈次回以降は日曜「東スポWeb」掲載〉