こんな時こそDeNA・田代コーチが説く「徐々に、徐々に」の精神で

2020年03月31日 16時30分

ガマンの日々を送る田代コーチ

【赤坂英一 赤ペン!!】「元気なんかねえよ」

 しばらく前、DeNAの田代富雄チーフ打撃コーチ(65)に「元気ですか」と聞いたら、こう言われた。

「最近は球場と家の往復ばっかりだからな。遠征先で飲みに行きたくてもホテルから出れないし、カラオケにも行ってないし。こんなに長いこと(外へ遊びに)出てないのは、長い人生で初めてだぜ」

 DeNAの新型コロナ対策は早かった。一軍の選手、首脳陣は今月2日から原則として遠征先で外出禁止。寮住まいの若手にも同じく外出を禁じた。

 私は田代コーチと何度も杯を交わし、歌も聴かせてもらった仲だ。そこで、たまには気晴らしをしたいですよね、と水を向けると、首を振った。「ダメダメ。感染第1号になるわけにはいかん」

 阪神で藤浪、伊藤隼、長坂が感染したのはそれから間もなくのことだ。球団の厳しい外出禁止令も、酒と歌を愛する田代コーチのガマンも、ともに正しかったのである。

 球界から感染者が出たことで、4月24日に設定されていた開幕日もまた延期となるだろう。こういうとき、指導者は選手に何を言うべきなのか。田代コーチは事態がこうなる以前から、「余計なことは言わないことだ」と、こう強調していた。

「だって、いつ開幕するかわからないだろ。次の開幕がこの日になった、だからその日に合わせてやっていこう、と言ったってさ、実際にその日に開幕するかどうか、誰にもわからないんだから。いま、ああしろこうしろと選手に言ってて、また開幕が延びたら、何だ、またか、となっちゃう」

 だから、「こんなときは、何でも徐々に、徐々に、と考えるのが一番だ」と田代コーチは言った。「徐々に、徐々に。今年は焦らずゆったり構えてやっていこうよ」と。

 ラミレス監督も25日に練習試合が中断されると、しばらく練習を休むことを決断。この時期にしては異例の“5連休”にすることを発表した。

「最初の3日間は練習を休む。次の2日間は自主練習で、練習したい選手はすればいい。この5日間はリフレッシュの期間だ。ずーっと野球の練習と試合ばかりやってきたからね。このへんで肉体的にも精神的にもリフレッシュしてほしいよ」

 練習再開予定は31日だが、「何をするかまだ決めていない」と言っていた。いまは「徐々に、徐々に」の精神で、これぐらい鷹揚に構えていたほうがよさそうである。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。