【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】理由は分からないけど、会うと必ず元気をくれる人って周りにいないだろうか。ロイヤルズのサルバドール・ペレスはそんな人だと言ったら、彼を知る多くの人がうなずいてくれる自信がある。

 コロナと手術離脱で直接話すのは4~5年ぶり。覚えているだろうかと後ろからボソッと「サルビー」とつぶやくように声をかけたら、振り返って「ハロー、マーマ!(おそらくスペイン語で女性の愛称)」と、近くにいたカルロス・サンタナに「誰がいると思う!?」なんて言って再会を喜んでくれた。8年前に日米野球取材で大変お世話になった2人だ。

 サルビーに会うと、必ず思い出すのが、ビクトリアズ・シークレットの香水と赤いシャワーサンダル。

 2014、15年のころだったが、チームメートだったアルシデス・エスコバーがつけている香水を借り打席に立ったところ、審判に「サルビー、いいにおいがするね」と褒められた上、ヒットが出たので、幸運の香水としてつけ始めた女性物の下着で有名なブランド、ビクトリアズ・シークレットの香水。ピンクやキラキラのついたボトルが多く、当時ユニークなゲン担ぎと話題になったが、実際に2年連続ワールドシリーズ進出して、15年には優勝してしまうのだから、間違いなくラッキーアイテムだった。

 シャワーサンダルも14年。ボストン遠征中に自分のサンダルを忘れ、レッドソックスが使う物を借りたところ、チームが勝ったのでいわゆる「借りパク」したサンダル。青のチームカラーの中、目立つ赤を臆さず履いていたのだが、そんな昔話で笑っていると「あれ、レッドソックスだったっけ? ナショナルズのシャワーサンダルじゃなかった? あれ、どこだっけな」。

 よく聞けば、サルビーは18年にも同じように忘れ、同じようにシャワーサンダルをラッキーアイテムにしたのだとか。17年、18年とナショナルズ戦がなかったのでサルビーの覚え間違いかと思ったら、18年のオールスターがワシントンD. C. で行われていた。ここまでくると彼が「借りパクする人」の印象になりそうだが、オールスターのサンダルは、確かにゲン担ぎになりそうだ。

 そんなサルビー、今はどんなゲン担ぎをしているのか。

「ミゲール・ガルシア」。少し考えてから、チームの打撃練習投手の名を口にしたサルビー。「僕は毎日とにかく同じルーティンを心がけていて、ケージやフィールドの打撃練習で必ずミゲールが必要。彼のような左利きの練習投手コーチは少ないし、ホームランダービーも投手を務めてもらったし、昨年中ごろから毎日同じルーティンを一緒にやってくれている」

 ミゲールさんとは大リーグに入る前、06年ドミニカ共和国のサマー・リーグで打撃コーチをしてもらってからの付き合いなのだそう。

 つまり、ずっとミゲールさんだったのだ。香水もサンダルも話としては面白いが、昨年の本塁打王、ワールドシリーズ優勝、長年のオールスター出場…間違いなく成功と呼べるサルビーのキャリアを支えてきた真のラッキーアイテムは、ミゲールさんだ。

 そう気づいて少し感動していたところにサルビー、「ところで大谷の打撃コーチって誰かな? トレーニングを受けたい!」。

 なお、このやりとりを近くで見ていたミゲールさんは、笑っていた。

 ☆サルバドール・ペレス 1990年5月10日生まれ。32歳。ベネズエラ出身。右投げ右打ちの捕手。2006年にロイヤルズと契約。11年8月にメジャーデビューすると、以降は強肩強打の正捕手として定着。13年WBCベネズエラ代表に選出され、球宴にも初出場。ロイヤルズが30年ぶり2度目の世界一に輝いた15年のワールドシリーズMVP。19年にトミー・ジョン手術を受け、20年シーズンから復帰。21年はエンゼルス・大谷と本塁打王を争い、本塁打王(48本)、打点王(121打点)の2冠に輝いた。シルバースラッガー賞4度、ゴールドグラブ賞5度を誇る。今季は指のけがで6月下旬に手術を受け、現在はリハビリ中。