タイガース ・カンデラリオ内野手 父から受け継ぎかなえた野球ドリーム

2020年06月13日 11時00分

タイガースのヘイメル(ロイター=USA TODAY Sports)

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信=ヘイメル・カンデラリオ内野手(タイガース)】「野球に対する愛も情熱も、父のものを全て受け継いでいる。父という存在がそばにいてくれることは、僕にとって本当に幸せなこと」

 タイガースの内野手、ヘイメル・カンデラリオの父ロヘリオさんはドミニカ共和国で野球アカデミーを経営している。若き日は大リーガーになる夢を抱き、アストロズ傘下のマイナー球団で邁進したが、あと一歩届かず…きっと私たちが知らないだけで野球の裏側に数多く存在するストーリーの一つ。野球に対する情熱を諦められなかったロヘリオさんは、野球アカデミーの設立を決意。家族を引き連れ、ニューヨークから地元サン・ペドロ・マコリスに移った。

「野球愛。愛する野球で家族を養いたい。愛する野球で子供たちを助けたいって。僕らドミニカンは、みんな野球が大好きだからね」。当時5歳のヘイメルはその時から親子で過ごす時間は野球漬けとなった。「父が行くところ、全部ついて行ったんだ。四六時中フィールドにいる人だったから想像できるでしょ?」

 ヘイメルは4~5歳から既に左右両方で打席に立っていたという。左投手しか相手にさせてもらえないと癇癪(かんしゃく)を起こし、両方で打つと言い張ってスイッチヒッターになった。ロヘリオさんには再三「両方やるなら、他のみんなより倍以上努力しなきゃならないんだぞ。分かってるか」と活を入れられながら育ったそうだ。

「スイッチヒッターは野球が大好きじゃないと、きつくて続けられないと思う。でも、僕は生まれた時から、ずっと野球に恋しているんだ。うまく言葉にできないけど、野球愛は僕のハート、血液の中にずっと存在し、一緒に生きてきた。野球に対する愛ほど強い愛を感じたことがないんだ」

 日本語にすると歯が浮いてしまいそうだなと思いながら訳したが、ヘイメルの真面目さや純粋さが漂うセリフに、ただ聞き入ったのを思い出す。この時「生まれた時に、ロヘリオさんの遺伝子に野球愛が組み込まれていたんだね」と言ったら、初めて「ああ、多分そうだ」と顔が少しほころんだのも印象的だった。

 趣味は教会に行くことと家族と過ごすこと。オフは必ずドミニカ共和国へ帰るそうだ。

「野球シーズンは6か月以上あって長いから、時間があるなら家族とゆったり充実した時間が過ごしたい。昔から…ファミリーマン」

 すてきだな、と思った。野球一筋で生きてきて、大リーガーになって父の夢をかなえた彼の真っすぐさは、とてもまぶしい。

「初めて大リーグに呼ばれた時、最初に電話したのは父だった。『Go get it! やってこい! ここまでひたすら頑張ってきたんだ。お前の知っている野球で、頑張ってこい!』って。エキサイトしながら激励をくれたよ。うれしかった。自分が誇らしかったよ」。ロヘリオさんの誇らしそうな顔が頭に浮かぶ。

 さて、私は父に誇りを感じさせることはできそうにないが、喜びそうな日本酒を早めにポチッとしよう。父の日って、何げに毎年贈り物に困る。

 ☆ヘイメル・カンデラリオ 1993年11月24日生まれ。26歳。米ニューヨーク州出身。185センチ、95キロ。右投げ両打ち。三塁手。ドミニカ共和国で育ち、2010年にアマチュア・フリーエージェントとしてカブスと契約。16年7月3日のメッツ戦でメジャーデビュー。17年7月にタイガースへトレードされる。同年9月23日のツインズ戦で先頭打者のセーフティーバントを一塁へ悪送球し、ボールがグラウンドを転々とする間に打者は本塁へ生還。メジャーでも珍しい「初回先頭打者セーフティーバント本塁打」を“演出”して話題となる(記録は三塁内野安打と三塁手カンデラリオの失策)。翌18年は144試合に出場し、自己最高となる19本塁打、54打点をマークした。