メジャーで活躍する「カギ」となるかもしれない。大リーグ・ブルージェイズ入りが決まった山口俊投手(32)に、古巣・巨人から“意識改革すべし”の声が上がっている。あるボールに対する意識を変えることで、山口の最大の武器・フォークがさらに生きるのでは、というのだが――。

 力感の少ないフォームから繰り出されるキレのあるボールと抜群のスタミナ。ケガのない頑健な肉体で、昨季はキャリアハイとなる15勝(4敗)、188奪三振を挙げた。日本では先発完投型の典型だが、メジャーでの先発としての評価は決して高いものではない。

 山口本人はメジャーでの起用法等について、当初は「いろいろやっていく中で新たな自分も探していかなければいけない。その時によって変わる」とこだわりを持たない姿勢を見せていたが、代理人には「先発の座を争うことが第1希望」であることを伝えていた。しかし、実際の評価は先発投手では5番手クラスで、むしろリリーフとしての適性を評価されており、ブルージェイズの球団幹部も起用法については役割を確定せず柔軟に考えたいとしている。

 宝刀フォークは誰もが認めるところ。しかし、先発としての評価がイマイチ上がらないのは、要所こそ球速150キロに迫るも、基本的には140キロ台中盤という直球にある。そんな周囲の声を見返してほしいと、巨人のチーム関係者からこんな声が上がっている。「もっと『あのボール』に対する意識を高めた方がいいのではないか」

 それは右打者の外角ボールゾーンからストライクゾーンへ切れ込んでくるツーシーム系のボール「バックドア」だ。昨季、山口はより投げやすいフォームを模索し、スリークオーター気味のフォームに変更。その影響で直球がややシュート回転がかかってしまうことに気づいたが、山口はそれを修正せず逆利用した。

「今年(2019年)に関してはちょっとシュート回転が強いんですよね。それを少し利用するじゃないですけど、そのイメージを持って投げているんですけどね」と山口本人が明かしたのは、右打者の外角直球をややボールゾーンへ投げることだった。

 最初はボールでもナチュラルなシュート回転のせいで、ギリギリストライクゾーンへ入ってくる。シーズン中も幾度となく見逃し三振を奪っており、その使い方は「バックドア」に近いものだった。

 シーズン中盤からは握りも少し変えるなど、本格化するかと思われたが、山口は「そこまで『バックドア』みたいなイメージはしてないです」となぜかトーンダウン。「(あくまでも)今の自分の球質を利用しているだけであって…それをメジャーみたいに意図して投げられたらすごいですよ」と、自信のなさすらのぞかせていた。しかし、自身の次の舞台はそのメジャー。バックドアとしての意識、ボールの精度を高めれば、持ち球が一つ増えるだけでなく、投球の組み立て、配球のバリエーションも増える。下馬評を覆す武器になる可能性もある。

 常々、「日々成長だと思っている」と語ってきた山口。「バックドア」への意識改革が、メジャーの舞台で成長する一助となるかもしれない。