エースで4番の主将が投打で躍動した。第104回全国高校野球選手権大会(甲子園)は15日に10日目を迎え、第4試合でプロ注目の二刀流右腕・山田陽翔(3年)を擁する近江(滋賀)が海星(長崎)に7―1で快勝。3回戦突破で3季連続のベスト8進出を果たした。

 中盤までロースコアの展開となり、白熱の投手戦が続いた。しかし、7回の攻撃で試合が一気に大きく動いた。1失点で力投を続けていた山田が今度は二死満塁で第4打席に立つと、相手先発・宮原の142キロ直球を強振。完璧にとらえた打球を左中間スタンドへ叩き込み、人さし指を掲げてゆっくりとダイヤモンドを一周した。試合を決める今大会初、3年ぶり大会史上53人目となる満塁弾に、聖地スタンドは大歓声に包まれた。

 投げては球威のあるストレート、持ち球のスライダーなど多彩な変化球を要所で組み込みながら7回114球、2四球1失点、9奪三振と堂々の快投を見せた。これで奪三振数は春夏通算98となり、松坂大輔(横浜)、荒木大輔(早実)らの記録を超え歴代単独9位に浮上。そして、この日の白星を手にし、歴代11人目の甲子園10勝投手となった。

 試合後は自ら放ったグランドスラムに「僕自身の力ではあんなホームランは打てませんし、スタンドからの応援だったり、球場(の思い)が一丸となったのかな」と目尻を下げながら振り返った。また〝平成の怪物超え〟となる通算98奪三振に達したことについては「偉大な方々の記録を越せたのはうれしく思う。まだ実感が湧かない」とやや控え目にコメントした。

 一方、多賀章仁監督(62)は「満塁ホームランは何回か見てるんですけど、巡り合わせとか、本当にあそこで打つというのが〝持ってる男〟だなとあらためて思う」と頼もしい二刀流右腕の勝負強さに驚嘆した様子。投球に関しても「ここぞという時の独特の間合いというか、オーラがある。しっかりそのボールなら大丈夫というボールを投げ切れる」と称賛し、最後まで目を細めていた。

 次の準々決勝(18日)は今大会初戦で2本塁打を放った浅野翔吾(3年)が主将として率いる高松商(香川)と激突する。多賀監督の誕生日である18日に向け、山田は「勝利というプレゼントをあげたい」と意気込んでいた。