長崎県佐世保市で起きた同級生殺害事件は猟奇的犯行の衝撃もさることながら、インターネットを通じて逮捕された加害者や被害者の情報の拡散も注目された。少年事件では本来、加害者の名前も顔写真も報道されないものだが、ネット上では遠慮なく露出。スマートフォンの普及も相まって混乱している。

 なかには間違っている内容も多々ある。例えば被害に遭った女子生徒(15)の父親は自衛官なのにネットでは当初、弁護士と伝えられた。たまたま被害者の住む町に同じ名字の法律事務所があったから起きた勘違いだった。しかし地元住民、特に年配者が口々に「被害者のお父さんは弁護士さんなの」と話していた。

 この法律事務所はHPで「今般の佐世保市女子校生殺人事件において(私の)子供が被害に遭ったかのような情報がネット等で飛び交っておりますが、明らかに事実と異なる情報ですので、皆様にお伝えいたします」と注意喚起していた。

 ある年配男性は「被害者も加害者も知らない」と言いつつ、いろんな情報を話した。聞けば「ネットで見たんだ。ネットに全部書いてある」ときっぱり。事件の情報は「まとめサイト」で読むことができる。ネット書き込みのまとめなので、真偽不明の情報も多い。

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「地方ではネットカフェが年配世代の集会所になっていることもある。事件を検索すればまとめサイトが上位に出ます。また、スマートフォンの普及により、年配の方でもネット情報に接しやすくなっている。ネットに免疫がないだけに、信じやすい。ネットに本当のことが書いてあるとは限らないと繰り返し言うしかない」と指摘する。

 伏せられるはずの加害者の名前や顔写真もネットには流出している。「モラルで駄目と言っても、儲かるのでまとめサイトはなくならない。100万~300万円の広告収入になることもある。同じネタで次から次へとまとめサイトを作るので、数が増えた分だけ人目につきやすくもなる」(井上氏)

 こんなネットの暴走について、現在の少年法では対応が難しいという。