【〝レジェンド雀士〟土田浩翔が選ぶMリーグこの一打・麻雀は人なり】麻雀プロリーグ「Mリーグ」創設当初から解説者として対局を間近で見てきたレジェンド雀士・土田浩翔が、「麻雀は人なり」という観点で2020シーズンを振り返る。最終回はベテランプロ2人。所属団体の最高峰タイトルを複数回獲得してきたセガサミーフェニックス・近藤誠一(57)と、KONAMI麻雀格闘倶楽部・藤崎智(53)だ。
近藤プロのこだわりはMリーグで際立っています。打点の低い手だったらアガリに行かない昭和麻雀とも言われる伝統的な打ち方がにじみ出ているのです。
こういった打ち方が形成されたのは、近藤プロが50代になってモンド麻雀プロリーグ名人戦に出場するようになってからです。その番組でミスター麻雀こと小島武夫プロ(享年82)をはじめ、熟練プロたちの影響を大きく受けたことで、当時の自分に足りていなかった“魅せる”を自覚するようになったからだと思います。
自分の知らない領域に入っていくのは、年齢問わず冒険です。やったことのないことに挑戦するのは、怖いと感じる年代に差し掛かっていた中で、進化を遂げることができた稀有な存在。10年以上、所属団体の事務局で選手たちのために働いてきたという下積み時代を経て来た苦労人だったからこそ、その才能が開花したのだと思います。
レギュラーシーズン終盤戦。ラス目でオーラスを迎えていた近藤プロに、配牌で満貫が見える手牌が来ました(写真1)。ラス抜けだけを目指すなら満貫でも十分ですが「大きく打って大きく勝つ」を標榜している近藤プロは、さらなる高みを目指して打っていきます。
678の三色同順の可能性も追いながら手牌を進行させ、10巡目に赤5萬を使ったピンフ・タンヤオ、高目イーペーコーのテンパイを入れて、リーチを決断します(写真2)。そして幸運にも高目7萬を一発でツモり、裏ドラも1枚乗って倍満。1本場だったことで一気に2万100点差をひっくり返し、トップフィニッシュとなりました(写真3)。
今シーズン、チームはレギュラーシーズン最下位となりましたが、こういった高打点のアガリがいつどこで出てくるのかわからないと、近藤プロは多くのMリーガーたちから畏怖されています。
藤崎プロは突出した“理”で打つ、頭の回転がものすごく速い打ち手です。
ヤミテンでのアガリが目立ちますが、相手のアガリ牌や仕掛けたい牌を抑えているシーンも多く見受けられます。たとえば配牌からの第1打、もしくは下家が役牌等をポンした後の1打目には、私の体感では95%以上、鳴かれないような牌を切っています。藤崎プロが麻雀を覚えた環境で培ってきた「出しゃばっちゃいけない」という部分が打牌に出ているので、一見弱気に見えるかもしれませんが、決して本人は弱気ではありません。
レギュラーシーズン中、藤崎プロがトップ目で迎えていたオーラスに、いぶし銀な一打がありました。
状況的には自らアガればトップが確定するので、単にアガることだけを優先するなら、この手牌(写真4)には選択肢が3つあります。【1】東切り。【2】9萬トイツ落とし。【3】6・7索外しです。
ちなみにポンしやすい9萬を残してドラ含みの6・7索を切り、9萬か西か白をポンしていけば、アガりやすそうな2・5索待ちとなる手牌です。しかも下家が3着目で北家の石橋伸洋プロなので、ドラ含みの6・7索は外しやすく、石橋プロに鳴かれても構わないという戦略的な考えでドラを切る人も多いでしょう。しかし藤崎プロはそういった対局を操作するような打牌はしません。そういう戦術があることも知っている上で、それを拒否する強さがあるのです。
実際の打牌は、早いリーチに備えて安全牌として東を残しながら、9萬をトイツ落とししていきました。そして白を暗刻にしてヤミテンに構えたまま、8索を静かにツモって満貫に仕上げて対局を終わらせました(写真5)。
いついかなる時でも、目先の損得にこだわらないベテランの妙。最終局だからといってこれで終わりだとは思っていない。オーラスであってもオーラスではない。この先もドラマは続いていくものだから、トップになれてうれしいではなく、この局が終わった先にはどんなドラマが待ち受けているのかを考えているのです。
生涯続いていく麻雀人生のひとつの過程として捉えているからこそ、明日に向かって打っていけるのです。
☆つちだ・こうしょう 1959年、大阪府生まれ。血液型=B。最高位戦日本プロ麻雀協会特別顧問。Mリーグをはじめ「THEわれめDEポン」等、メディア対局にも数多く出演。札幌、東京、埼玉、大阪、広島、福岡で麻雀教室を開講中。著書は「『運』を育てる 麻雀界の異端児 土田浩翔の流儀」(KADOKAWA)ほか多数。












