【レジェンド雀士からの金言】麻雀プロ界を創造してきた男たちへのインタビューシリーズ、最高位戦日本プロ麻雀協会元副代表・金子正輝(69)の後編。闘志むき出しの豪胆な打ちっぷりで最高位を4度獲得するなど、多くの麻雀ファンを魅了してきたレジェンドは、64歳の時に急性大動脈解離で緊急手術し、一時は意識の回復すら危惧されたが「下半身はまひしてますけど、上半身は元気なんで麻雀も打てます」。自身の麻雀哲学や闘病、後進の麻雀プロたちに伝えたいことを語る――。
これまで貫いてきた麻雀哲学がある。
「最高位戦に入ったばかりの頃は灘麻太郎さん、小島武夫さん、阿佐田哲也さん、古川凱章さんといった著名な誰かの打ち方をマネをしている若手プロは多くいました。私はというと、古川さんから『金子の麻雀は誰のマネもしていない』と言われました。私の麻雀スタイルを端的に言えば、ツモの流れに合わせて手牌を構成していく打ち方です。例えば多くの人が三色同順を狙っていきそうな手牌であっても、私はツモってきた牌で手牌を構成していくので三色は重視しません。そういった手役にこだわらない打ち方が、提唱してきた『牌流定石(ぱいりゅうじょうせき)』という考え方なんです」
令和の麻雀プロ界をどう見ているのだろうか。
「かつての麻雀といえば賭け事のイメージが強く、プロアマ関係なくツイている者が勝つという見方が多くありました。強くなりたければ、とにかくひたすら打つこととされ、研究会のような場もほとんどなかったんですが、安藤満さん(享年55)が主宰する牌理を追求するための牌理塾には参加していました」
牌理とは効率良くアガるための牌の組み合わせ理論のことだ。
「その牌理塾の主だったプロたち、土田浩翔、阿部孝則、河野高志らが続々とタイトルを取っていったんです。私も最高位と名翔位を取れたので、研究会って効果がすごいんだなと実感しました。今では研究会などで集まって勉強する熱心なプロも増え、モンド麻雀プロリーグやMリーグなど活躍する場も広がり、女性や子供も気軽に麻雀を始められるようになったすごくいい時代になってきたなと感じています」
金子自身も2018年から金子正輝研究会、通称“ねこけん”を主宰していた。
「当時Aリーガーだった石井一馬と佐藤聖誠から、一緒に研究会をやってほしいと言われたのがきっかけです。2人とも見どころがあるなと思っていたので、牌理塾にも来ていた多井隆晴を呼んで最初は4人で始め、その後に石橋伸洋も参加してくれました。牌理塾で研究会の大切さもよく分かっていたし、先日、Mリーグでもドラフト指名された石井一馬は自分の息子と同じ世代でもあったので、お願いされたらやらないわけにいかない。麻雀に対して真摯な若い人たちがいること自体、うれしかったんですよね」
後進の麻雀プロに伝えておきたいことがある。
「AIなどで単に知識や技術を身に付けるだけではなく、麻雀と真摯に向き合って、なんとか自分で考えて答えを導き出してほしいなと思っています。その積み重ねこそが本当の実力“地力”になるからです」
20年、大動脈解離の手術は成功した。だが下半身にまひが残ったことで車いす生活となった。
「振り返れば大動脈解離の予兆はありました。背中の血管がプチッと切れるような感覚があって、痛みを覚えたんですが、翌日マッサージを予約していたからそのまま就寝したんです。でも起床したらますます痛くなっていて、妻に救急車を呼んでもらおうと階段を下りた途端、足が動かなくなってしまったんです。たまたますごい先生に手術してもらえて、こんな元気にしてもらったんで、なんとかもうちょっと頑張ろうかなと思っています」
現在は専門施設で床ずれを治療する生活が3年ほど続いている。「今は治療に専念して、まずは家に帰れるようになること。そうなれば麻雀も打てますからね」。その日を迎えるため、病室に設置した大きなモニターで最高位戦Aリーグをはじめ、様々な麻雀対局を観戦したり、タブレットで「セガNET麻雀 MJ」に参戦するなど準備に余念はない。
そんな金子には好きな言葉がある。「行雲流水から派生した『行雲流牌』という言葉は色紙によく書いてます。牌流定石と同じ意味で自然に打つことを表した造語なんですけど、行雲という言葉が好きで、雲が行くがごとく自然のままという気持ちになれると、すごく大きな麻雀を打てる気がするんですよね」
☆かねこ・まさてる 1956年1月17日、新潟県長岡市生まれ。東洋大学卒。最高位戦日本プロ麻雀協会元副代表。101競技連盟元理事代表。78年、最高位戦Bリーグでプロデビュー。主な獲得タイトルは第9、11、12、24期最高位、第21、22、23期名人位、第10期八翔位、第10期名翔位、第1回MONDO21電影大王位決定戦、第12回モンド名人戦、第14、15回モンド王座他多数。埼玉県坂戸市で麻雀店「KO(ノックアウト)」を夫婦で経営













