関門海峡を望む下関のウオーターフロントに2025年12月に開業した「リゾナーレ下関」が、米誌「TIME」の「The World’s Greatest Places of 2026」宿泊部門に選出された。開業から間もない段階での評価の背景には何があったのか。観光地として“通過型”とされてきた下関で、どのような変化が起きているのか。総支配人・鈴木良隆氏(39)の言葉から、その理由に迫った。

「魅力はあるが、滞在時間を延ばす仕組みが不足している」。鈴木総支配人は、下関についてこうした認識を出発点に据えた。「水産資源や観光資源が非常に豊かで、福岡や広島といった都市部からのアクセスもいい。リゾートとして成立するポテンシャルがある」と語る一方で、観光客の宿泊率は約15%にとどまり、多くが日帰りにとどまる現状にある。

プールから広がる関門海峡と関門橋
プールから広がる関門海峡と関門橋

 施設の設計では、関門海峡という立地を徹底的に軸に据えた。全室から海峡を望める客室に加え、インフィニティープールやテラス、船を活用した体験など、あらゆる要素を海峡と結びつけている。「お金を出しても手に入らない価値をどう生かすか」。その発想を軸に設計していった。時間帯によって表情を変える海峡の景観をどう体験として組み込むかも重視し、朝夕や夜で過ごし方が変わる構成とした。さらに、滞在の中で自然に海峡と向き合う時間をつくることにも意識を向けた。建築面でも同様の思想が反映されている。直線を抑え、曲線を多用した外観や館内デザインは、海峡の流れやふぐのフォルムなど地域の要素を取り入れたものだ。なみなみテラスやふぐをモチーフにしたプールなど、地域性を前面に出した仕掛けも随所に取り入れている。「新築でも周囲に違和感がない」との声が出ている。

 特徴的なのは、施設単体で完結させない視点だ。水族館や市場など既存の観光資源と組み合わせ、来訪者が自然に街へ出る流れをつくる。「まずは下関というエリアを知ってもらうことが必要」という言葉通り、施設の中に囲い込む設計ではない。開業準備では直前まで手を入れた。レストランでふぐを前面に出す構成に改め、夜の過ごし方も追加した。「やらなくても開業はできるが、それでは妥協につながる」。その判断が最終段階でも続いた。こうした調整は細部に及び、施設全体の方向性を整えていった。

全天候型屋内プールでウォータースライダーを備えた「ふぐプール」
全天候型屋内プールでウォータースライダーを備えた「ふぐプール」

 TIME誌の選出について、鈴木総支配人は「正直驚いた」と話す。一方で「下関の魅力をどう見せるかに集中してきた結果ではある」と受け止める。「やってきたことが間違っていなかった」という言葉の裏には、手探りの積み重ねがあったこともうかがえる。開業後の手応えについても「日々感じている」としながら、「スタッフが生き生きと働いている状態が揃った時に実感する」と言葉を選ぶ。「サービス業はスタッフそのものが商品」という認識は、現場の空気にもつながる部分だ。

 総支配人としての役割については「スタッフが働きやすく、お客さまに価値が届く環境をつくること」と説明する。場所のポテンシャルだけでなく、現場の状態をどう整えるか。その積み重ねが結果につながるという考え方だ。今回の評価も、その延長線上にある出来事の一つと位置づけている。

リゾナーレ下関を背に立つ鈴木総支配人
リゾナーレ下関を背に立つ鈴木総支配人