朝晩は秋の気配を感じるようになったこの頃。こうなると、酒飲みとしては燗酒が恋しくなってくる。燗酒と言えば、巷では「冷酒よりも酔いにくい」とまことしやかに言われているが、これといった科学的根拠はない。
まずよく言われる「アルコールが飛ぶ」ということだが、アルコールの揮発温度は78度なので、この説はない。料理に使う場合は沸騰させるため、アルコールは飛ぶが、燗酒はせいぜい温めても60度前後だからだ。
次に「内臓が温まるので、冷酒よりも酒が早く抜ける」という説だが、これもまた学会に発表できるような根拠は残念ながらない。ただちょっと期待できるのは、内臓を温めることで肝臓をはじめとする内臓のパフォーマンスがアップするのは周知の事実。つまり肝臓によるアルコール代謝が促進されるので、悪酔いしにくいと考えてもいいだろう。
また、「日本酒は他の酒よりも悪酔いしやすい」という説も明確な根拠は皆無。酒に含まれるアルコールの質に変わりはないので、飲み過ぎればどの酒も一緒である。
体感として言えるのは、燗酒は自分のペースでちびちび飲めるので、ピッチが速くなりやすい冷酒よりも血中アルコール濃度が上がりにくいというのはある。すすめ上手と一緒に飲むと大変なことになるが、お銚子を自分の元に置き、ペースを崩さなければまず二日酔いになることはない。要は温度と言うよりも、飲むペースと摂取するアルコールの総量が大事なのだ。
酔う、酔わないは別として、1本の酒を薄めずに温度を違えることで、別の酒のような味わいを楽しめるのは日本酒ならでは。暖房器具がなかった時代は、温めて出す酒は客人にとって最高のおもてなしだったという。燗酒は特に生酛や山廃酛といった、昔ながらの製法で造った酒が向く。水をかたわらに置きながら、秋の夜長を燗酒で楽しもう。












