「武蔵野」「はるひ学園」「プリティー桃」…。これらはすべて文字の書体「フォント」の名称だ。今年5月、人気番組「マツコの知らない世界」(TBS系)でフォントが大々的に取り上げられた。文字を見た瞬間にフォントを言い当てる“絶対フォント感”の持ち主である数学教師が奥深い世界を紹介したことで、デザイナーなど「一部の人のもの」だったフォントへの興味が一般にも広がってきた。いまやフォントは素人にも作れる時代。一獲千金も夢じゃない? フォントの“ふぉんとう(=本当)”の魅力を書体マニアに聞いた。

 一部の好事家の間で話題になっていた「フォントかるた」が先日、インターネットで一般発売された。48枚の札ごとに、同じ文言がすべて異なるフォントで書かれた超高難易度のかるただ。

 製作の中心になったデザイナーせきねめぐみさん(51)は「ノリで作って手売りしたら、欲しいと言ってくださる人が増えた。同業者だけでなく一般の方にも順調に手にしてもらっている」と話す。

 フォントかるたの大会では「こんなのできるわけがない」と笑う一般参加者が続出。ロボット「MSゴシック絶対殺すマン」が認識能力を駆使して、フォントかるたの中から「MSゴシック」の札をつかんでゴミ箱に捨てる動画も話題だ。「かるたを通じてフォントに興味を持って」(せきねさん)という作戦は成功しつつある。

 商品の解説を担当するデザイナーの伊達千代さん(50)は、根っからの“フォントマニア”だ。東スポを開くと、その目が光った。「新聞で使用されるフォントは明朝体。東スポは『毎日新聞明朝』にも似てますね」。本紙は毎日新聞から購入した「毎日フォント」を使っている。さすが!!

 企画書にヘンテコな書体を使えば、仕事を進めることもできない。「フォントを制する者はビジネスを制する」とは言い過ぎではない。商品のパッケージに使う書体ひとつで、売れ行きが変わるともいわれる。

 書体の進化・増殖は著しい。

「私がデザイナーを始めた30年前には2つの書体しかなかった。今では1万以上もあります」(伊達さん)。最大手「モリサワ」を筆頭にフォントメーカーが作った商用フォントが販売されているほか、個人が作ったフリーフォントも人気だ。オープンソースのフォントを使えば、誰でも改変して好きなフォントを作れる。

 LINEスタンプの作成・販売で大儲けした人もいるとあって「工夫次第では作ったフォントで大儲けできるかもしれません」(伊達さん)。気になった人はフリーフォントについて調べてみよう。

「漢字」には膨大な労力を必要とするが、「ひらがな」と「カタカナ」なら挑戦する価値はありそう。フォントを擬人化して楽しむ人まで現れたのも興味深い。人間がフォントに“個性”と“性格”を感じる証拠だろう。

 かるたの発売と並んで、好きなフォントに投票する選挙「FKS(フォントかるた書体)48」が開催中だ。現在の1位は「A1明朝」。大ヒット映画「君の名は。」のタイトルに使用された。少々にじんだ印象のある爽やかな書体だ。

「映画の雰囲気とマッチしたフォントの効果もヒットに貢献したと言えるでしょう。最近はデザイナーのA1明朝の使用頻度が増えています」(伊達さん)

 17日の「AKB48」総選挙では20位につけた「NMB48」須藤凜々花(20)が結婚宣言で大波乱を巻き起こした。本家総選挙に負けない“台風の目”になるフォントも注目される。