「日本酒は好き。でも今日は酔いたくない」
そんな時、日本酒好きは意外と困る。ビールやワインならノンアルの選択肢は増えたが、日本酒となると、まだまだ少ない。
そんな中、「だったら、日本酒を造ってから、アルコールを抜けばいい」という発想で登場したのが、10月15日発売の「囃子」(山形・小嶋総本店)だ。「囃子」はまず純米酒を造り、気圧を下げ、低い温度でも蒸留できる減圧蒸留でアルコールを取り除く。その後、脱アルコールによって失われた香りを補い、味わいのバランスを整えて仕上げる。開発には約4年を費やした。当面は飲食店向けに限定して販売し、一般小売は今後検討する予定だ。
ということで、実際にテイスティングさせていただいた。グラスに鼻を近づけると、森を思わせる清涼感のある香りが立つ。米の存在感とほどよい甘味が広がった後、ほどよい酸味が味を引き締めてくれる。飲み応えもしっかりある。「ノンアルだから物足りないのでは?」という予想をいい意味で裏切られた。一般的なスパークリング日本酒と比べても遜色がない。
「囃子」の魅力がさらに開花するのが料理との相性だ。試飲会ではサーモンの麹漬けといくら、米沢牛の味噌粕漬けなどと合わせて飲んでみた。「サーモンはわかるが、さすがに濃い味の牛肉は厳しいのでは?」と思ったが、とんでもない。味の核とも言える酸味が甘辛い味を際立たせ、脂をしっかり流し、より一層おいしさが増した。
429年の歴史を持ち、純米酒を造り続けてきた老舗の小嶋総本店だからこそ、造れた味なのだろう。日本酒ラバーの私が欲しかったのは、まさにこういう「アルコールを抜いた本格的な味わいの日本酒」である。「飲めないから仕方なく」ではなく、「今日はこれを飲みたい」と積極的に選べる一杯が登場したことは大きい。本格的な選択肢がまだ少ない日本酒のノンアル市場に「囃子」が新しい風を吹き込んでくれそうだ。












