京都府警は15日、金品を盗む目的で群馬県館林市の住宅敷地内に侵入したとして、石倉颯杜容疑者(26)を住居侵入の疑いで逮捕した。府警は、石倉容疑者が匿名・流動型犯罪グループ(匿流=トクリュウ)内で、事件を計画する「案件屋」を担い、指示役の最上位にいたとみている。共犯とされる実行役ら男2人も、すでに逮捕されている。案件屋とは一体どういう存在なのか。

 京都、大阪両府内で昨年12月から今年3月にかけて起きた空き巣や住居侵入など6件の事件を巡り、京都府警はこれまでに、実行役や指示役ら計26人を逮捕・書類送検した。府警は、石倉容疑者がこの6件でも案件屋を担っていたとみて、関連を調べている。

 案件屋とは、ターゲットの資産状況や住所、建物の間取り、現金・貴金属の保管場所などの情報を入手し、それを基に犯行を計画する役割だ。案件屋という呼び名や独立した役割は匿流型の犯罪で目立つようになったものだが、その機能自体は従来の強盗グループにも存在した。

 例えば、2003年版「警察白書」には、暴力団員が多額の現金を保管している住宅や事務所などの情報を収集し、強盗の対象を選定。下見や凶器の調達、犯行計画の策定、実行部隊の手配などを担っていたと記されている。現場の監視や見張り、実行役の運搬を末端の組員らが担当し、犯罪収益を分配する構造もあった。

 同白書では、暴力団側が独居老人宅を標的に選んで強盗計画を立て、日本人仲介者を通じて中国人の実行グループを手配した事例も紹介されている。

 元警察関係者は「昔からあった情報屋、計画役、仲介役の機能が、匿流では案件屋という独立した役割に変化したのでしょう。SNSや秘匿性の高い通信アプリを通じて、指示役や実行グループに情報を提供する〝犯罪情報の卸売業者〟のように機能している可能性があります」と指摘する。

 匿流では、黒幕・首謀者を頂点に、指示役、案件屋、リクルート役、実行役、運転役、見張り役、回収係、換金役、資金管理役などへ役割が細分化されている。実行役はSNS上の闇バイトで犯行のたびに集められ、犯行当日に初めて顔を合わせる場合さえある。

「実行役は、仲間の素性やグループの全体像を知らされていないことが多い。そのため、実行役が逮捕されても、警察が上位の黒幕や首謀者にたどり着くのは難しい。役割を細分化し、メンバーを流動的に入れ替える構造が、結果として上位者の匿名化や摘発逃れにつながっているのです」(同)

 案件屋が指示役を兼ねたり、回収係が換金役を兼ねたりするなど、1人が複数の役割を担うこともある。匿流は固定的な構成員を抱える従来型の犯罪組織とは異なり、案件ごとに必要な人員がパーツのように集められるネットワーク型の犯罪集団といえそうだ。