買っても、未来は売らない――。今夏のMLBトレード市場で最も鮮やかに勝ち切ったのは、ア・リーグ東地区首位を走るレイズと言っていい。19日(日本時間20日)の本拠地ブルージェイズ戦も7―6で制し、76勝50敗。2位ヤンキースに5ゲーム差をつける。群雄割拠の東地区で主導権を握るチームは、3日(同4日)のトレード期限直前にも勝負手を連発した。

 メッツからフレディ・ペラルタ投手(30)、マーリンズからリアム・ヒックス捕手(27)、オリオールズからタイラー・ウェルズ投手(31)、ドジャースからジャック・スウィンスキー外野手(28)を獲得。ペラルタは昨季サイ・ヤング賞投票5位の実績を持ち、ヒックスは移籍前101試合で打率2割8分2厘、14本塁打、62打点。ウェルズは救援と先発の双方をこなせる右腕で、スウィンスキーもドジャース傘下3Aで打率2割9分1厘、21本塁打、72打点と打棒を取り戻していた。ペラルタとヒックスにはそれぞれ有望株3人、ウェルズにも1人を差し出し、スウィンスキー獲得でも捕手とマイナー投手を放出。まさに「買い手」に徹した期限だった。

 米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」も、レイズが期限前に「どのチームよりも積極的」に動いたと分析した。しかも驚くべきは、これだけ有望株を対価に放出しながら、生命線のファームが痩(や)せていないことだ。主力級の若手を守りながら、余剰戦力と層の厚さをトレード資産に変えた。

 MLB公式サイトのファームシステムランキングでは、2026年プレシーズンの10位から一気に2位へ浮上。首位はドジャースだが、レイズには球界トップ10級のテオ・ギレン外野手(20)、フューチャーズゲームMVPのネイサン・フレウェリング捕手(19)、今年のドラフト全体2位グラディ・エマーソン内野手(18)ら逸材が控える。トップ10圏外にも他球団なら上位に入るほどの人材がひしめくという層の厚さだ。

 目先の補強に全力を注ぎながら、未来の弾薬庫もほぼ満タン。今夏最大の「勝者」は、初の世界一を狙う有力候補として存在感を増した。3連覇を狙うドジャースにとって、最も不気味なのは金額では測れないこの底力かもしれない。