3冠王では足りない――。「10冠王」という前代未聞級の称号が、現実味を帯びてきた。アストロズのヨルダン・アルバレス外野手(29)が、歴史的な打撃シーズンを突っ走っている。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は20日(日本時間同日)、今季残り6週間を切ったMLBで「歴史を刻む可能性を秘めた」存在としてアルバレスを大きく取り上げた。

 同サイトが算出したところによれば、今週が始まった時点でアルバレスは打率、本塁打、打点、出塁率、長打率、OPS、得点、安打、出塁数、総塁打の主要10部門でア・リーグトップ。19日(同20日)時点でも打率3割2分3厘、36本塁打、88打点と3冠王争いのど真ん中にいる。通常なら打率、本塁打、打点の「3冠」だけでも球史に残るが、その枠を一気に10部門まで広げようとしているのだから規格外だ。

 しかも今季のア・リーグは規定打席到達者で打率3割以上がわずか3人という打低傾向。その中でアルバレスは、打率上位を争いながら36発を積み上げる。打率2位のレイズ、チャンドラー・シンプソンは本塁打ゼロとあって、確実性と破壊力を同時にここまで高水準で両立している異質さが際立つ。

 何より、その希少性がすさまじい。打点が公式記録となった1920年以降、同一シーズンにこの10部門すべてでリーグ1位となったのは1922年のロジャース・ホーンズビーと1967年のカール・ヤストレムスキーだけ。地区制が導入された1969年以降は誰一人として成し遂げていない。

 しかも「3冠」のスケールもリーグ内にとどまらない。同サイトは19日夜(同20日)の時点で、アルバレスが本塁打あと1本、打点あと4で、打率を含む3部門すべてで両リーグ最多、もしくは最多タイに並ぶ位置にいたと指摘。過去100年間に打率、本塁打、打点のすべてでメジャートップに立ったのは34年のルー・ゲーリッグ、42年のテッド・ウィリアムズ、56年のミッキー・マントルの3人しかいない。

「ジ・アスレチック」は、アルバレスについて「単に歴史を追い求めているのではなく、伝説を追い求めている」と評した。3冠王という言葉さえ小さく見える異次元の快進撃。今秋、球史のページに刻まれる数字は「3」ではなく「10」になるかもしれない。