「子供がお酒を飲む」。

 日本でこんな話を聞けば、まず「そりゃダメでしょ!」と思う。私も青少年アルコール関連問題アドバイザーの資格を持っているだけに、子供の飲酒には敏感だ。

 ところが世界には、私たちの酒の常識では理解しにくい食文化がある。それがエチオピア南部に暮らすデラシェ(D’irashe/Dirashe)という民族だ。何と彼らの主食は「酒」。酒といっても私たちが飲むような嗜好品ではなく、タカキビ(ソルガム)やトウモロコシなどの穀物を原料とした濁りのある低アルコールの醸造酒だ。彼らにとっては、私たちのご飯やパンに近い存在といっても過言ではない。

 しかも興味深いことに、子供も酒を口にする。ただし「パルショータ」ではなく「カララ」と呼ばれる簡易的な発酵酒だという。カララはアルコール度数が約1・8%と低く、子供が好む甘口の酒。しかし、低アルコールとはいえ、酒ではないか。いたいけな子供が酒を飲むなんて…。だが、現地を調査した研究では、「デラシェの子供たちは周辺地域と比べて栄養状態が良好」だという。発酵酒が食事の一部として栄養を供給していることも、その背景にあると考えられている。何ともすごい世界があったものだ。

 だが、これはあくまでもデラシェだけの文化における常識。「子供がお酒を飲んでも大丈夫」という話ではない。日本では20歳未満の飲酒は禁止されているし、子供の飲酒を肯定する根拠にもならない。

 では、なぜ子供は酒を飲んではいけないのか? 大きな理由の1つが、脳やカラダが発達途中にあるからだ。また、若いうちから飲酒を始めると、将来的にアルコール依存症になる確率が高まることも指摘されている。

 夏休み真っ最中の今、祭りやバーベキューなど、子供が酒を目にする機会も増える。開放的な気分になり、誘惑に駆られる子供もいるかもしれない。「一口くらいなら」とすすめたりせず、ビシッと叱れる大人でいよう。
 ※参考文献「酒を主食とする人々」(本の雑誌社、高野秀行著)