夢の舞台は、涙でにじんだ。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」は6日(日本時間7日)、ドジャースのエリザー・アルフォンゾ捕手(26)が5日(同6日)に本拠地ドジャースタジアムで行われたパドレス戦で待望のMLBデビューを果たすまでの「壮絶な一日」に焦点を当てた。
ベネズエラ出身のアルフォンゾはこの日「9番・捕手」で先発出場。3回裏に初打席へ向かうと、本拠地の観客は総立ちとなり、温かな拍手を送った。単なる新人への歓迎ではなかった。試合の数時間前、6月24日(同25日)に母国ベネズエラを襲ったマグニチュード7・2、7・5の2度にわたる巨大地震で行方不明となっていた妹エリアナさんと継母パトリシアさんが、犠牲者として発見されたことを知らされていたからだ。
アルフォンゾ一家はカリブ海に面したラ・グアイラ州のリゾートホテルに滞在していた。父のエリザー・アルフォンゾ・シニア氏は2006年から11年までMLBでプレーした元捕手で、現地球団で活動中だったという。ジ・アスレチックによれば、地震による死者は3342人、負傷者は1万6470人、避難者は1万7345人に達した。家族にとっての悪夢は、長いマイナー生活を経てつかんだ夢舞台と重なった。
それでもアルフォンゾはグラウンドに立った。帽子には妹と継母のイニシャル「E y P」を記し、電話で話した父と兄からは「フィールドに出て、この日を楽しみ、妹のために頑張れ」と背中を押された。同じベネズエラ出身のミゲル・ロハス内野手(37)も帽子に「アルフォンゾ」「Fuerza Matatan」と書き込み、一家への支援を示した。
デビュー戦は2打数無安打で、チームも2―5で敗れた。だが勝敗を超え、26歳捕手が見せた姿は重かった。アルフォンゾは試合後、スペイン語で「妹と継母に敬意を表し、この困難な状況の中で全力を尽くすために試合に出ました」と語った。妹は3週間前、自分の野球人生に関する「すてきな夢」を見たと話し、それが現実になるまで教えないと言っていたという。
「彼女が生きていて、僕がメジャーでプレーする姿を見てくれたらよかったのに」。悲しみを抱えたまま、アルフォンゾは忘れ得ぬ第一歩を刻んだ――。












