北の名門が沈めば、背番号27の値札だけが跳ね上がる。カブス・鈴木誠也外野手(31)の去就が、米球界でにわかに熱を帯びてきた。カブスは10日(日本時間11日)、敵地デンバーでのロッキーズ戦に2―3でサヨナラ負け。これで3連敗となり、34勝34敗の勝率5割に逆戻りした。ナ・リーグ中地区では首位ブルワーズに8ゲーム差をつけられる4位。最大15あった貯金は跡形もなく消え、今夏のトレード期限へ向けて「買い手」どころか「売り手」転換の現実味が一気に増している。

 そこで急浮上しているのが、今季で5年8500万ドル(約136億5000万円)契約の最終年を迎える鈴木だ。米スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」の敏腕記者、ケン・ローゼンタール氏は、カブスが低迷から抜け出せなければ、鈴木が移籍市場で人気物件となり、複数球団による争奪戦に発展する可能性をリポートした。

 しかも、その視線は一部球団にとどまらない。右の強打者を探すフィリーズに加え、レイズ、ガーディアンズ、ホワイトソックス、ロイヤルズ、カージナルスも、打線強化を狙う状況次第では候補に浮上し得るという。前出の6チームはいずれもポストシーズン争いをにらみ、外野と打線の厚みを求める球団。短期決戦で一発のある右打者は希少価値が高く、鈴木の名前が市場で目立つのは必然でもある。

 鈴木は今季ここまで打率2割4分7厘、9本塁打、22打点、OPS0・742。3月のワールド・ベースボール・クラシックで右膝を痛め、開幕直後の調整にも影響を残した中で本来の爆発力を完全には見せ切れていない。それでも昨季は32本塁打、103打点をマーク。メジャー通算でも96本塁打、318打点を積み上げており、実績面での説得力は十分だ。

 米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」でも報じられていたようにフィリーズ有望株との1対1案も取り沙汰されているが、同サイトの焦点は個別の仮想トレードではない。ローゼンタール氏がクローズアップしているのは、市場全体での鈴木の価値だ。契約が今季限りのため、獲得側に長期負担が残りにくい点も魅力となる。

 今夏のトレード期限は米東部時間8月3日午後6時(同4日午前7時)。例年より数日遅い設定となったことで、各球団は7月下旬までの星取りを見極めた上で、買い手に回るか、売り手に転じるかの判断を迫られる。カブスにとっても、この期限までの戦いが鈴木の去就を左右する最終猶予となる。

 一方で、鈴木の契約には全球団に対するトレード拒否権が含まれている。カブスが放出に傾いても、最後のカギを握るのは本人の意思だ。ただ、チームが失速し、優勝争いから後退するほど、強豪球団で勝負したい鈴木側の選択肢も広がる。カブスの急落は、単なるチーム危機では終わらない。今夏のメジャー移籍市場で、日本人スラッガーが主役の座に躍り出る可能性が出てきた。