昨年12月17日に死去した脚本家の内館牧子さん(享年77)は好角家として知られ、女性で初めて大相撲の横綱審議委員会委員に就任した。プロレスへの造詣も深く、2009年度から14年度まで東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞の特別選考委員を務めている。プロレス大賞の選考委員を50年担当し、内館さんと親交のあったプロレス評論家の門馬忠雄氏(87)が、人気脚本家の〝プロレス愛〟を振り返った。

 2人の出会いはプロレスがきっかけ。内館さんから力道山とともに日本プロレスを創設した遠藤幸吉について聞かれ「遠藤さんのことをいろいろ話して教えたら、お礼に番付表から何まで相撲のグッズをたくさん送ってくれた。それ以来の付き合い」という。

 内館さんはプロレス記者歴59年の門馬氏をも驚かせるほどプロレスに精通していた。09年6月に死去した三沢光晴さんの大ファンだったが、雑誌の企画で三沢さんの追悼対談があった際には「ノアの団体カラー、エメラルドグリーンのスーツを着てきたんだ。脚本にも三沢の言葉とかを入れてね。プロレスの本も出している。とにかく格闘技にはものすごく詳しい。何度か一緒にお酒も飲んだけど、博識で魅力的な女性だったね」

 内館さんがプロレス大賞の特別選考委員となったのは、三沢さんが亡くなった09年度から。同年度の総括では「三沢さんが残したモノは大きかった。残った選手たちが『プロレスのためにやらなくちゃ』と決意を新たにしたのは間違いない」とその功績を熱く語った。

 一方で門馬氏は「三沢のファンだったけど、移り気なところがあって、自分のひいきは変わっていた」といい、「大日本のドロドロした試合も好きだった」。内館さんが大日本プロレスの会場へ熱心に足を運んでいたことは有名。13年度プロレス大賞のベストバウトには、同年3月の葛西純VS沼澤邪鬼を推した。この試合は両者血まみれのデスマッチだったが、内館さんは当時の取材に「プロレスの面白さは何でもありで、他の人がまねできないことをやること。常軌を逸した狂気を見せた」と絶賛している。

 人気脚本家がなぜデスマッチに魅せられたのか。門馬氏は「大日本には異色のレスラーがたくさんいる。ある意味おどろおどろしい部分、そこが彼女の女性としての感性に引っかかったんじゃないかな」と指摘。大日本マットでは観客席で沼澤に抱きつかれたり、11年11月の後楽園ホール大会で「ウッチー、マッキー!」と叫ぶアブドーラ小林から唇を奪われたり…など散々な目にあっても内館さんの〝プロレス愛〟は変わらなかった。

 門馬氏は「男くさいものにどっぷりはまっていた。男だらけの世界に、飛び込んだ勇気はすごいよ。相手を強く攻撃するのではなく、痛いところを突く。包容力があり、喜怒哀楽がはっきりしてて、会ってて楽しい人」と評する。その上で「女性でプロレスを語れる友だちだったので、寂しいし残念です」と悼んだ。